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イギリス社会の労働者階級制度・差別はあるのか・本

Author nopic iconEileen
カテゴリ:社会問題

初回公開日:2018年01月01日

更新日:2020年08月29日

記載されている内容は2018年01月01日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。

また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

イギリス社会の労働者階級制度・差別はあるのか・本

イギリス社会の労働者階級制度

階級制度は大きく3つに分かれる

イギリスの階級は主に上流階級、中流階級、労働者階級の3つに分かれます。上流階級は働かなくても生活が可能な王室、貴族、資産家などの人達です。彼らの割合は全体の中で一桁と極めて少数派で、名門オックスフォード大学やケンブリッジ大学に進学しています。

中流階級は一般にホワイトカラーと同じ定義で、大学まで進学して頭脳労働に就く人達を指します。弁護士、医師から店舗経営者、ジャーナリスト、ビジネスワーカーなどが含まれます。

それでは労働者階級はどのような人達を指すのでしょうか?

労働者階級はどんな人達?

労働者階級は割合として全体の半数を占めます。彼らは裕福ではないため、他の階級のように大学へ進学することなく就職をします。一般にブルーカラーとも呼ばれており、労働の内容は高い学力や専門性を必要としないトラックドライバー、清掃業、農場、鉱山、工場などです。

しかし、現代社会では肉体労働だけでなく、レジ作業が中心のサービス業や業務が過酷なコールセンター業など、長時間で低賃金な労働者も労働者階級に含まれています。

イギリスでは階級による差別があるの?

イギリスは古くから続く階級社会の意識が根強く残っています。後に獲得する経済力以前の「生まれ育ち」が重要とされるため、所属している階級から抜け出すことは容易ではありません。ここでは階級による差別が起こる場面を取り上げていきます。

言葉遣い

中流上層〜上流階級の人達はBBC放送のアナウンサーが用いる「BBCイングリッシュ」を話します。もとは富裕層が通う寄宿学校で使われる特有の発音で、上流階級の人達が身につける英語であることから「クイーンズ・イングリッシュ」とも呼ばれます。

対照的に、労働者階級の人達は「コックニー」と呼ばれる訛のあるロンドンの下町言葉を話します。その特徴は「hを発音しない」「eiがaiになる」「単語の途中や語尾で使うtは発音しない」などで学校の授業で習う英語とは異なり、慣れていないと聞き取るのは難しいです。

中流階級では上記2つの英語の特徴を併せ持った「エスチュアリー・イングリッシュ」と呼ばれる英語を話します。近年では言葉の明確な棲み分けは減ってきていますが、話し方1つで差別される恐れは残っています。

文化的教養

相手の所属する階級の話題に付いていくためには、それぞれの階級に応じた文化的教養を身につける必要があります。わかりやすい例として、日本ではスポーツに対して「個人が観たいものを観る感覚」ですが、イギリスでは階級ごとにはっきりと区分けされています。労働者階級はサッカー、上流階級はハンティングや乗馬、中産階級以上はテニス、ゴルフ、ラグビーという具合です。

そして実際にスポーツ選手として成功しても階級は変わりません。ベッカムは労働者階級出身でサッカー選手として成功し、裕福な暮らしをしていますが、サッカーは労働者階級の行うスポーツです。身なりや住む場所を変えてもイギリス労働者階級の立ち位置から離れられることはありません。

資金力・コネ力

労働者階級が中流階級に上位するために最も大きな障害となるのが資金力です。中流階級で一定の地位を得るためには学費の高い私立大学を出ることが欠かせません。また、イギリスは縁故社会であるため、タダ働きのインターンをしてコネクションを作ることも必要です。

しかし、労働者階級の親元で育つ若者にはそのような金銭的余裕はありません。学力があってもあきらめてしまったり、勉強すること自体に消極的な若者が多いのが実情です。

白人労働者階級

近年、大きな社会問題となっているのが「チャヴ」と呼ばれる白人労働者階級への差別です。もともとチャヴは「スポーツブランドのウェアを着た労働者階級の若者」という意味でした。しかし政治家の偏見やジャーナリズムの煽りにより、貧しい労働者階級に対して「公営住宅に住み定職につく努力をしない、暴力的な人達」というレッテルが貼られました。

敏感に反応した中流階級は「チャヴ」を呼び名に労働者階級に対する差別を行うようになりました。経済雇用情勢の悪化や移民の進出に対する不安が影響していると考えられています。

時代により失われた労働者階級の誇り

階級制度の中では一番下に分布する労働者階級ですが、サッチャー政権以前には炭鉱労働者や工場労働者は学歴がなくとも相応の収入を得ることが可能でした。彼らは地域コミュニティを持ち、自らの地位に誇りを持っていました。特に炭鉱労働者はイギリスのエネルギー源である石炭を扱うことから、労働組合はひんぱんにストライキを行う力を持っていました。

1979年からサッチャー政権の時代となり、新自由主義に則り国際競争力を上げる政策が実施されました。それにより収益の見込めない炭鉱は閉鎖され、工場の海外移転が進み、経済の自由化と引き換えに多くの労働者階級が無職となりました。産業とともに発展してきた街は衰退し、新たな労働者階級であるサービス業の多くは低待遇で、数も不足しています。

イギリスの階級に関する本

チャヴ 弱者を敵視する社会

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戦後のイギリス社会の変化を描いた通史としても読めるが、イギリスに興味のある人だけでなく、日本の現在と将来を考えるために誰もが読むべき本だと思う。