先入観を捨てる方法
先入観とは?
具体的な例では、初対面の人が「鈴木さん」だったとき、多くの人はすでに面識のある鈴木さんをイメージして、自分の知っている名字だと認識するでしょう。知り合いと苗字が同じというだけでその人に先入観をもつことは少ないですが、これに出身地や国籍、学歴、家族構成などといった情報が絡んでくればいかがでしょうか。
まだ相手との直接的なコミュニケーションを踏んでいないにもかかわらず、自分よりも仕事ができそうだとか、ぜひ仲良くなりたいと思うこともあるでしょう。うわさなどで相手の情報が増えるに従って、その人に対するイメージが自然とできあがってしまうのです。
先入観・思い込み・決めつけ・固定概念の違い
思い込みとは
「あの人は自分に好意をもっているのではないか」という「妄想」や、日時や場所を勘違いしてしまう「記憶違い」などを、一般に「思い込み」と呼びます。このうち、記憶違いには潜在的な願望が先入観として反映しているともいわれ、間違いに気付けば速やかに改められる思い込みです。
しかし個人的な妄想から生じる思い込みや、そもそもの根拠が個人の主観だった場合、つまり思い込みの根拠を他者と共有できない場合は、周囲がいくら理論的に説明しても受け入れてもらえないことも多く、トラブルの要因となることもあります。
決めつけとは
偏見や差別意識とも同根である「決めつけ」は、対象物をわずかな情報だけで判別し、あとは思考停止に陥ってしまうという状態です。わずかな情報の中に、その人にとって何らかのネガティブな要素があり、それ以上の理解を阻止するのです。
「決めつけ」は人種差別などに顕著です。単なる妄想よりもタチが悪いのは、それが少なからず個人的な経験知に基づいた結果だという点です。思考を止めてしまうほどのネガティブな経験が過去にあり、二度と関わりたくないという心情から「決めつけ」という方法で自己防衛を図っていると考えられます。
固定観念とは
間違った固定観念や、正しい固定観念というものは存在しません。神道の式年遷宮に見られる伝統儀式などはよい例で、ほかにも戦時中に多くの人が戦場へ赴いたのは、当時多くの人がそれがを当然と考え、固定観念化したからです。
一方、現代の私たちが「戦争は絶対に繰り返してはいけない」と思うのも固定観念で、どちらかが正しいとか優れているということはありません。あと数百年後の未来では、現代の民主主義も“古い固定観念”として扱われる可能性も十分あるのです。
先入観にとらわれないようにする対策
脳の構造
新しい情報が増えるたびに、私たちは先入観に照らして判断します。いわば先入観は、すべての判断の基準であり、生きるために大切なものです。また、先入観はたくさんの判断を省略するためのショートカットキーでもあります。
行ったことのない外国に旅行するときは、安全対策として予備知識を持っておく方が良いでしょう。しかし、「あの国は反日感情が強いらしい」「イスラム教の国だから治安が悪い」などの偏見に変わってしまえば、せっかくの旅の楽しみも半減してしまいます。
情報を塗り替える
習慣や行動を変えることで古い先入観が役に立たなくなれば、私たちは先入観を大幅に塗り替える必要があるでしょう。たくさんの人に会って価値観の多様性に触れたり、新しい趣味を初めてみるのもです。
人は毎日生まれ変わる
そんな人が身の回りにいるときは、会うたびに毎回気持ちに切り替えるトレーニングをしてみましょう。相手に変わることを期待するのではなく、自分が発想を変えるのです。昨日と同じ自分はいないように、相手も昨日とはちがうのです。
たとえ遅刻や愚痴が続いても、「まただ」という思いはまったく無駄なものです。待たされる可能性がある場合は、日ごろから読みたい本を用意しておけば時間の無駄を省くことができます。
先入観のメリットと問題点
温故知新(故きを温め知しきを知る)
先入観の最大のデメリットは、それが正しい認識を妨げている可能性でしょう。特に、容姿の特徴、ヘアスタイルなど、外見から得た情報で相手を判断することを「第一印象」といいますが、特に対人関係では重要といわれるように、私たちは第一印象に左右されやすいところがあります。それでも外見はその人の一部でしかないのです。
相手の印象に応じて対応を変えた結果として人間関係に偏りが生じ、その経験をもとにデータが増し加えられることで、偏見が生まれます。また、世紀の大発明が思わぬトラブルやアクシデントから生まれたというケースも珍しくありません。先入観から逃れることで発見できることは、まさに無限に存在するのです。