最後の晩餐に隠されたユダの謎・場所・キリスト・ナイフ
レオナルド・ダ・ヴィンチとは?
探究心の塊
その知識の広さに、人類史上最も多才であるとの呼び声も高く、卓越した才能と知識を持っていたことが分かります。
ルネサンス期を代表する芸術家であり、「飽くなき探究心」と「尽きることのない独創性」を兼ね備えた人物といい、日本の美術史では「万能の天才」といわれている。史上最高の呼び声高い画家の一人であるとともに、人類史上もっとも多才の呼び声も高い人物である。
完全主義者
実は「最後の晩餐」は数少ない貴重な完成品の一つなのです。レオナルドは完全主義者であり、自分の作品にとても厳しく、少しでも納得できないと自分の作品を破り捨てていました。
一つの作品にかける時間も長く、何年にも渡って手を加え続け、それでも結局完成できないことも多かったのです。
新しい技法をいつも探求していたレオナルドはその実験にも長時間をかけていたと言われています。とても論理的で実証的あり、その緻密で計算された考え方は絵画にも表れていました。
命あるものをこよなく愛する
中には、レオナルドを裏切るようなことをする弟子もいたようですが、それでも、レオナルドはこの弟子を可愛がって多くのことを教えたと言われています。
また、菜食主義であり、カゴに入って売られている鳥を買っては放してあげるなど、命あるものを愛する非常に心優しい面もあったようです。
強い精神力の持ち主であり、心が寛大であった驚異的な知性の人、レオナルド・ダ・ヴィンチは、たくさんの人を魅了していたようです。
ポイント☛
- 芸術家でありながら、他の分野においても知識があり功績を残した
- 完璧主義者であり、絵画一つ描くにも緻密に計算している
- 弟子や動物に愛情を注ぎ、寛大な心を持っていた
最後の晩餐とは
人の感情を、表情やポーズで描写する技法や、人物の配置や構図における創造性、色調の繊細な移り変わりなどが特にレオナルドの作品では多く見られます。
これらの革新的な絵画技法を確立し、その集大成と言われるのが、「モナ・リザ」、「岩窟の聖母」、「最後の晩餐」です。
1490年代に描いた絵画作品の中で最も有名な「最後の晩餐」はレオナルドの作品の中でも製作期間3年と、比較的短い期間で描かれたものです。ミラノにあるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院の食堂の壁に描かれたもので、イエス・キリストが刑に処される前夜に12人の弟子と共に摂った夕食の時に起こった出来事の場面が描かれています。
「最後の晩餐」は、一点透視図法という、ある位置から見ると絵画の天井の線と実際の壁と天井との境目につながり、部屋が壁の奥方向へと広がって見えるような技法が使われています。
イエスのこめかみの位置に釘を打ち、そこから糸を張ってテーブルや天井、床などの直線を描いたものと思われます。
12人の弟子たちはイエスを中心に3人一組で描かれており、4つのグループはほぼ等しい幅を持つよう左右に構成されています。弟子たちは手の形やポーズによって感情が表現されているなど、手の表現が大きな特徴となっています。
最後の晩餐に隠されたユダの謎
その裏切り者とは、聖書の中ではイスカリオテのユダと言われる人物だとされており、レオナルドの「最後の晩餐」ではイエスの左隣2人目の人物、イエスを売って得たとされる銀貨30枚が入った袋を持った人物がユダとして描かれています。
ユダの場所
これはレオナルドがその当時一般的だとされていた定番の構図に疑問を抱いていたからだと考えられます。
最後の晩餐をしている時点では裏切る者がユダだとは他の弟子たちは分かっていないはずで、実際は、誰が裏切り者なのかと騒然となったであろう場面をレオナルドは忠実に再現したのです。
また、レオナルドの「最後の晩餐」では、当時の常識では考えられない位置にユダが描かれています。
ユダの両隣に描かれているペトロ(左隣)とヨハネ(右隣)は、イエスにとって一番の弟子だとされており、特にペトロはイエスが一番信頼していた弟子としてイエスの左に、ヨハネはイエスが一番愛した弟子としてイエスの右に描かれるのが一般的でありました。
しかし、レオナルドはペトロとヨハネの間にユダを描いたのです。
なぜユダが裏切り者なのか
そして実際にキリストが捕らえられた時、イエス・キリストの仲間なのではないかと疑いをかけられたペトロは「神に誓って、自分はキリストの仲間ではない。彼のことは知らない」と3回にも渡り否定をしてしまうのです。
ポイント☛
弟子を一列に配列し、ペトロをキリストの横に置かないことで、人は皆罪人なのだというキリストの教えを絵画で表現している可能性もある。
ユダとキリスト
もともとユダはイエスへの信心がそれほどなかったという記述もあります。イエスとの関係においても数々の福音書の中で、ユダの記述は他の弟子たちと比べると少なく、イエスとユダはそれほど親密だったとは言えないようです。
ヨハネの福音書によれば、イエスは最初から裏切り者がユダであることを知っていましたが、最終的には最後の晩餐の時にユダの裏切りを予言した後、ユダに向かって「しようとしていることを、今すぐしなさい」と言ったと言われています。
ユダとペトロのナイフ
ペトロはなぜか右手を後ろ手にしていて、その手にはナイフが握られています。左手はヨハネの肩にかけられており、ヨハネに何かを語りかけているのでしょうか。ヨハネはうつむき耳を傾けているようにも見えます。
最後の晩餐の記述の中にはイエス・キリストの懐には一番愛した弟子がいたという記述がありますが、レオナルドの「最後の晩餐」にはイエスとヨハネの間には明らかに距離があるのが見えます。なぜ、レオナルドはあえてその空間を作ったのでしょう。
これには裏切り者のユダの後ろにはペトロがいたのではないかという説があります。レオナルドの描いたペトロを平行移動させて空いている空間に置くと、ペトロがイエスの首元に手を当て詰め寄っている姿がぴったりと重なるからです。
右手のナイフはヨハネのお腹に向けられています。ヨハネが、中性的で女性のように描かれていること、ヨハネをイエスの右隣へ平行移動させるとぴったりとイエスに寄り添う形になることからヨハネはイエスの子供を授かったマグダラのマリアではないかとも言われています。
ポイント☛
- イエスはユダの裏切りを知っていたが、その存在の重要性をわかっていたため裏切りを実行させた。
- ペトロを平行移動させるとイエスの首元に手を当て、詰め寄っているようになるため、ユダの後ろにはペトロがいたのではないか
- ヨハネを平行移動させるとイエスに寄り添う形になるため、ヨハネはマグダラのまりあではないか
絵画を読み解く面白さ
こんな風に絵画を読み解くのもロマンがあって楽しいですよね。もしかすると、絵画には私たちが知らないだけでもっとたくさんの意味が隠されているのかもしれません。自分なりに読み解きながら楽しんでみても面白いのではないでしょうか。