「親しき仲にも礼儀あり」ってどういうこと?
「親しき仲にも礼儀あり」なんて言われてもピンとこなくて、でも「それどういうことですか?」と聞けずにそのままになってしまいがち。「親しき仲」とは「礼儀」とはなんなのでしょうか。「親しき仲にも礼儀あり」の語源や意味、心がけるべきポイントについて、考えてみましょう。
「親しき仲にも礼儀あり」の語源・意味
論語とは
孔子が生きていた時代は、さかのぼることなんと紀元前500年前後という、ちょっと想像できないほどの昔。そんな紀元前の昔から存在し、誰もが教科書で見たことのある歴史を動かした人物たちが論語を読み、そこから学んでいます。
人の手から手へ渡り、現代まで絶えることなく伝えられてきた「論語」。もうそれだけで、なんだか説得力と迫力があります。
論語の中に見る「親しき仲にも礼儀あり」
「有子曰く、礼の用は和を貴しと為す、先王の道、これを美と為す。小大之に由る。行われざる所あり、和を知って和すとも、礼を以てこれを節せざれば、亦行わるべからざるなり」(学而第一より)
[現代語訳]
「礼」というものは「和」を生み出すものである。過去の王たちも「和」を「美」とした。些細なことにも重大なことにも、その考え方を当てはめた。しかしその「和」は、その美しさや大切さの元となる「礼」を忘れてしまうと、違うものになってしまう。
さらに詳しく
つまり「生活におけるどんな場面でも相手に対する礼儀を忘れないことが、親しみ合う上で大切である」ということ。長くなりましたが、この論語の言葉の意味が「親しき仲にも礼儀あり」と同意と考えていいのではないでしょうか。
「親しき仲にも礼儀あり」が出てくるシチュエーション
両親(家族)から言われる
とは言うものの、一応「親しき仲にも礼儀あり」の言葉がなぜ出たのか、相手が家族であっても確認しておくべきです。家族の間でも「礼儀」についての考えは違うもの。一番身近で理解者である家族に嫌われてしまう前に、常に色々な話をすることはとても大切です。
友達に言われる
あなたが「このままでは(あなたが)恥をかく」と思って忠告してくれる理知的で友達思いの友達を持ったか、もしくは「親しき仲にも礼儀あり」と思わず口にしてしまうほど、あなたが友達に礼を欠いたことをし続けてしまったか。一度、振り返って考えるべきでしょう。
彼氏・彼女に言われる
デートに遅刻しても謝らない、約束を忘れる、話したことを覚えていない、お金を借りて返さない、など相手に相当失礼なことをしていませんか。彼氏・彼女といっても、もともとは他人。一緒に居続けたいなら、むしろ家族よりも慎重に扱うべき存在なのです。
上司・先輩に言われる
上司や先輩は、あなたが「この人とは仲がいい。分かり合えている」と思っても、友達より遠い存在だということを忘れてはいけません。「親しき仲にも礼儀あり」の言葉が出たら、その次の瞬間から言葉も態度も丁寧にするべきです。
おさえるべきポイント!「親しき仲にも礼儀あり」
両親(家族)への礼儀
家族以外の人の前では敬語を使う
ある程度大人になったら、家族以外の人がいなくても敬語で話すよう心がけたほうがいいかもしれません。家族の中で敬語で話していれば、目上の人と話す機会が増えても苦にならないはずです。言葉遣いを見直すだけで「親しき仲にも礼儀あり」は身近なものになるでしょう。
頼る時は素直に
あなたがなにか頼む時、頼んだ家族に同じことを頼まれた時に応えられるかを想像しましょう。未来でも構いません。家族にはなおさら、してもらったことには「同じことを返そう」と思うくらいの気持ちが大切なのです。
自分の両親(家族)であることを疎かにしない
そして、その人たちが大切にしているものを貶したり、蔑んだりすることはしないこと。家族の間で「親しき仲にも礼儀あり」を実践する上で、これがもっとも大切なことかもしれません。
友達への礼儀
友達への「礼儀」と「気を使う」は、「リラックスする」と「だらしなくする」の違いほど微妙で難しいもの。ここでは友達との間での「親しき仲にも礼儀あり」について、おさえるべきポイントをご紹介します。
家族と同じように思わない
友達という関係は家族や恋人とは違い、ずっと友達であり、線で描くなら平行線のような関係です。そのため客観的な意見を言ってもらえたり、違いを楽しめたりする距離感が大事なのです。その距離を大切にすることが友達に対する「親しき仲にも礼儀あり」につながります。
深追いしない
人には知られたくないこと、教えたくないことがあるものです。あなたにもきっと心当たりがあるはず。友達が語らないことが、あなたの身に危険を及ぼすようなものでない限り、踏み込まないよう遠慮すること。それが友達との「親しき仲にも礼儀あり」であるのです。
試さない
大人になったら話は別です。もし友達の何かが気に入らなくて恥をかかせてやりたくなっても、試すようなことをして追い詰めたりしてはいけません。友情における「親しき仲にも礼儀あり」の「礼儀」とは、気に入らないことはまっすぐ相手に話すこと、また相手の言葉にも耳を傾ける心でもあります。
彼氏・彼女への礼儀
恋人であることを忘れない
相手を選び、相手からも選ばれたのが恋人同士です。そのことを忘れず、丁寧さを失わないようにしましょう。選んだ相手に対してむけた心はそのままあなたに返ってきます。「親しき仲にも礼儀あり」のあなたが相手に向けた「礼儀」は、そのまま相手があなたに向ける「礼儀」なのです。
男と女のプライドを尊重する
相手が自分を思いやってくれることが嬉しく、誇らしかったはず。ここでの「親しき仲にも礼儀あり」の「礼儀」は、お互いのプライドを尊重し、わかった気にならないということ。つまらないこだわりと思わず、相手を理解し、大事に思おうとする態度なのです。
相手の家族を悪く言わない
「どんな教えられ方したの?」「君の家族おかしいんじゃない?」など、家族に向けられた心無い言葉は、相手を直接否定するよりも相手が傷つくもの。どんな家族にも何かしら独特な習慣があるものです。「親しき仲にも礼儀あり」の心は相手の家族にも向けましょう。勢いで相手の家族を否定しないよう気をつけてください。
上司・先輩への礼儀
「気にするな」という人にほど気をつける
この場合、逆の意味ととった方がいいでしょう。まず、気にしていなかったら自分から言いません。「お酒の席だから無礼講」という人も同じです。上司や先輩における「親しき仲にも礼儀あり」の言葉は、他の状況とは違った意味があると言えるでしょう。
してもらったことには必ず返す
必ず返すようにしましょう。奢ってもらった場合、現金できっちり返したりしたら逆に失礼なのでご注意を。栄養ドリンクでも缶コーヒーでもいいので、差し入れましょう。助けてもらった場合も同じです。上司や先輩との間の「親しき仲にも礼儀あり」では「必ず返す」ことが礼儀になるのです。
上に立たない
あなたにとっては歯がゆくて辛いかもしれませんが「下にいる」という立ち位置を確立することに集中してみてください。未熟な人やできない人の居場所を作れる人であること。その努力ができる人は、周りから必要とされ大切にされるでしょう。
「親しき仲にも礼儀あり」どんな人にも心がけること
挨拶を欠かさない
挨拶というのは相手に対して自分の状況を知らせる、とても短い会話のようなもの。挨拶をしなくなるということは、一緒に居ながらにして相手を認めず、自分の状況も知らせないということと同じなのです。
さらに言うなら、挨拶は相手の目を見てしましょう。「親しき中にも礼儀あり」は「親しき仲にも挨拶あり」と言っても過言ではないのです。
お礼を言う
この場合の「親しき仲にも礼儀あり」に必要な努力は「人からしてもらうことに対して常に敏感でいなければならない」ということになります。そうすることによって、あなたは自分がいかにいろいろな人に支えられているか理解し、感謝できるようになるでしょう。
「お礼」の「礼」は、まさに「礼儀」の「礼」。この心がけは「親しき仲にも礼儀あり」そのものというわけです。
「親しき仲にも礼儀あり」とは
「親しき仲にも礼儀あり」は一見「人には礼をつくせ」という教訓に思えますが、その実は「礼をつくすことによって秩序が生まれ、それが巡って結局は自分自身へ返ってくる」という、まさに「和」のサイクルを作り出す言葉であるということがわかります。
あなたから「和」のサイクルを作り出せるかもしれません。ぜひ「親しき仲にも礼儀あり」を心に留めておいてください。