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「することができる」という日本語は正しい?類義語や言い換え・契約書上の解釈

Author nopic icon3 and
言葉の意味 / 2017年09月12日
「することができる」という日本語は正しい?類義語や言い換え・契約書上の解釈

「することができる」という日本語は正しい?

複雑な言い回しになっており、日本語としておかしくないか?

いろいろな文章を読んでいると、「~することができる。」という表現を見かけることがあります。さらっと読み流すと、英語でいうと「Can」って意味かな、という程度に解釈して次に行ってしまうところですが、厳密に考えたとき、この日本語表現は正しいのでしょうか。

単に「~できる。」と書くことができるのに、わざわざ「することが」を付けているのは重複で、誤った日本語なのでしょうか。頭痛が痛い、右に右折する、のように重複している言い回しは誤った言い方で、恥ずかしいものだ、と思われてしまわないでしょうか。

憲法で使われている!

簡潔に結論から申し上げますと、「することができる」という日本語自体は正しいと言えるでしょう。その根拠ですが、文法的な正しさを検証していくアプローチもあると思います。しかし、実は、もっと現実的・実務的なアプローチがあります。

「憲法の条文が『することができる』という日本語表現を使っているから」

というアプローチが分かりやすいのではないでしょうか。憲法第四条二項は、天皇の権能と権限行使の委任に関する条文ですが、「天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。」と規定されています。

法治国家日本の全法律の根幹にある憲法において、しかも国民の象徴である天皇の権能について規定している条項において、誤った日本語が使われているなどということがあり得えません。

最高裁判決でも用いられている!

憲法のみならず、最高裁の判決であっても、「~は是認することができる。」などという表現が使われることもあります。具体的な判例を挙げるまでもなく、容易にいくつも見つけることができます。

言うまでもなく、最高裁の判決は、最高裁より下級の高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所における判断を拘束する最も重要な判決です。その一言一句には日本語のプロである優秀な裁判官の英知が結集されており、細かな表現であっても注意が配られています。

憲法と最高裁判決で使われている以上、おかしいはずがない!

以上のとおり、「することができる」という言い回しは、憲法および最高裁判決で用いられています。憲法の制定担当者も、最高裁判事も、日本語という言語のスペシャリストです。これらを超える権威をもって、「することができる」の日本語としての正しさを否定できる団体は見つからないでしょう。

以上のことから、「することができる」という日本語が、日本語として正しいか否かという問題については、「正しい」といわざるを得ません。

「することができる」と「しなければならない」の違い

「することができる」という日本語と対比される表現として、「しなければならない」という表現があります。「Aは、〇〇することができる」というときには、Aには〇〇をする権利があります。他方で、「Aは、〇〇しなければならない」というときには、Aは〇〇をする義務があります。

具体的には、「することができる」という場合には、Aは「〇〇しない」という余地があります。しかし、「しなければならない」というときには、Aには「〇〇しない」という選択肢はなく、〇〇しなければ、何らかのペナルティを課されたり、強制的に〇〇させられることになります。端的に言えば、〇〇をしない、という裁量があるかないか、という違いです。

「することができる」と「するものとする」の違い

それでは、「するものとする」という表現との関係はどうでしょうか。日常的に目にする表現ではないので、意味が取りにくいかもしれませんが、「Aは〇〇をするものとする」とされていれば、Aは〇〇することが決まっている、という意味になります。「弱い義務付け」とも言われており、Aは原則的に〇〇をしなければならないのです。

ここで気になるのが、先ほど述べた「しなければならない」との違いです。一見同じ意味に見えますが、「〇〇しなければならない」には〇〇しないという例外の存在が含意されていませんが、「〇〇するものとする」の場合には、原則は〇〇するのだけれど、もし合理的な理由があるのであれば、〇〇をしなくてもよい場合があってもよい、という意味が含まれています。

微妙なニュアンスの違いですが、場合によっては重要になってきます。

「することができる」の類義語・言い換え

しなければならない

既に説明してきましたが、「Aは〇〇することができる」と「Aは〇〇しなければならない」という表現は、〇〇をしない余地があるか、〇〇する・しないの裁量があるか、という点で異なっています。この違いは実質的には非常に大きなものです。

例えば、〇〇をしてもらう側からしてみれば、「〇〇することができる」としてしまうと、してくれない可能性がでてきてしまいます。

具体的には、「Aがお金を支払った場合には、Bは本を渡さなければならない」となっていれば、Aはお金さえ払えば本をもらえますが、「Aがお金を支払った場合には、Bは本を渡すことができる」となっていたら、Aはお金を払ったことによって、Bが本をくれるかもしれないしくれないかもしれないという曖昧な状態しか得られません。

そのため、言い換えはできない、と考えておいたほうがよいでしょう。

~え行+る

動詞によっては、「~できる」の意味で、語尾に「える」とか「ける」や「せる」といった「え行+る」を付ける場合があります。例えば、「今夜、電話で話せるかな?」というときは、「電話で話すことができるかな」という意味になっていますし、「これ、子供でも噛めるかな」というときには、「子供の歯の力でも噛むことができるかな」という意味になっています。

国語の文法的にいうと、動詞には「五段活用」の動詞があり、五段活用の動詞に可能の意味を持たせるときには、「話せる」「行ける」「読める」といったように、「え行+る」で「することができる」と同じ意味にできるということです。

できる

「することができる」は、もちろん単に「できる」とだけ言っても同じ意味にできます。例えば、「延長することができるよ。」というのは、「延長できるよ。」に言い換え可能です。どちらの表現を使うかは、文脈に合わせて自由に選択していただければよいのですが、避けるべきは、どちらかの言い回しを連続して使うことです。

例えば、保育園の日誌に、「今日はお昼ご飯を全部食べることができました。その後、ブロックで上手に遊ぶことができました。きちんと2時間お昼寝をすることができました。」では非常にくどい言い方になります。文章日本語として誤りとまではいえませんが、日本語として不自然で下手な日本語といえます。適切に言葉の言い換え(パラフレイズ)を行うことが大切です。

契約書で使われる「することができる」の解釈

契約書で「することができる」が用いられる例

この「することができる」という表現は、権利があることを示す言い回しとして権利義務関係を定める契約書に頻繁に登場します。身近な契約書でいえば、部屋を賃貸するときの賃貸借契約書などで見てみましょう。

家主が借主との契約を解除する権限について定める規定では、「以下の事由に該当する場合には、甲(家主)は本賃貸借契約を解除することができる。」といった形で規定されています。

例えば無断で他の人に貸したり、禁止なのにペットを飼ったり、はたまた賃料の支払いをしなかったり、といった契約書で列挙された事由に該当すれば、家主は当該契約を解除することができるのです。

契約書における「することができる」の役割

契約書上での「することができる」という言葉が含まれた条文は、その主語になる者に権利を与えるという役割を持っています。先ほどの賃貸借契約の例でいうと、家主に賃貸借契約の解除権が与えられる、ということになります。

契約書で「することができる」という用語が使われた場合には、法律家は「権利があるだけであって、義務はない。」と理解します。勝手に犬を飼われてしまっても、家主がそれを広い心で見逃せば、借主は契約を解除されず住み続けることができるのです。

法律家は、特に日本語の厳密な使い方を求めるので、このあたりの読み分けは厳格に行います。なぜならば、契約書は、当事者の意思の合致を示すものだからです。双方が自分の意思で規定を作るのですから、『しなければならない』という語尾にできたのにしなかった」という当事者の意思が尊重されてしまうのです。

法律は「することができる」を適切に使ってくれている

レアカードの売り買いの場合を想定してみよう

では、先に挙げた賃貸借契約以外で、「することができる」という表現に関わる身近な例としては何があるでしょうか。例えば、民法541条は、「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。」と定めています。

少し分かりにくいので、こんな例を想定しましょう。あなたがあるキャラクターのレアカードを持っているとします。それを、友人のYさんに売るべく、売買契約を締結しました。しかし、Yさんは一向にお金を払ってくれません。

こんなとき、民法は、この日までに支払ってくれと通告しておけば、その日までに支払いがなかったときには契約は解除できる、としてくれているのです。

解除するのが常に最良の解決方法か?

もしこれが、「解除をすることができる」ではなく、「解除しなければならない」になっていたら、Yさんからの支払いがなければ、レアカードの売買契約は解除されます。しかし、例えばあなたがYさんの動向を知っており、決めた期限の翌日にはお金が入りそうだと知っていたら、契約を解除してしまう必要はありません。

また、このレアカード、レアといえばレアなんだけど、あんまり人気がなく、Yさん以外に売り手を見つけるのが難しかったらどうでしょうか。解除してしまったら、買ってくれるアテが全くなくなってしまいます。

せっかく買い手を見つけたのに、民法のせいで売買契約がなくなってしまう、なんて馬鹿らしいです。そのあたりは民法もわかっているので、「解除をすることができる」という規定になっているのです。

文章の文末は、注意深く見よう!

以上のとおり、何かの取り決めをする際には、その文末が「することができる」なのか、「しなければならない」なのか、それともその他の表現なのか、注意する必要があります。

また、その他の表現であっても、「することができる」と同じ意味になるのか、「しなければならない」と同じ意味になってしまうのか、ここも注意しましょう。

厳密な言い回しに慣れることで無用なトラブルを回避しましょう。