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魚に痛覚神経はある?ない?魚の痛覚と痛点の場所

Author nopic iconsatoukana
雑学 / 2017年11月04日
魚に痛覚神経はある?ない?魚の痛覚と痛点の場所

魚に痛覚神経はある?ない?

「魚に痛覚はない」というのは、かつて定説でした。確たる証拠はないものの、「魚のような下等な生物が痛みを感じるはずがない」という人間至上主義的な断定や、痛覚や痛みに対する反応が見られないという意見もあり、長年に渡り、この説が支持されてきました。

しかし、その定説が崩れつつあります。最近の研究によれば、魚にも痛覚受容体が確認され、したがって痛覚は存在するとの研究結果が報告されています。

痛覚「ない」説

魚に痛覚が「ない」ことを証明した研究はないと言われます。痛みを感じるかどうかは、医学的な見地、痛覚受容体の有無、そして魚の意識にまで踏み込まなければ証明できないと言われますが、魚に痛覚がないという説では、主に観察から結論を引きだしているといえるでしょう。

例えば、人間においては痛みのあまり失神するとか、痛みを避けようとするなどの行動が見られますが、魚にはそれが見られないため、痛覚がないのではないかと推測できるという論法になります。これは、魚釣りをする人では経験があることでしょう。

魚は痛みを感じるはずの針を引っ張る方向に逃げるという行動を取りますし、また、痛みのあまり魚が失神したという光景は見たことがないでしょう。しかし、だからといって痛覚がないとは言い切れないのではないか、というのが現在の見解の主流になっています。

一方、魚には大脳新皮質が少ない、ゆえに魚は感情や情動を処理する能力が無く、したがって痛みを感じることがないという説もあります。これは、痛覚があるとする学者の「痛覚受容体は人間に比べて少ない(が痛みを感じる)」という説とも考え方が似ているともいえ、この場合、痛覚はあるが、どの程度痛みを感じるかという程度の問題になるとも言えるでしょう。

痛覚「ある」説

では、魚に痛覚があるという根拠はどのようなものでしょうか。ある研究によると、ニジマスの頭部にマーカーを付け、痛みを感じるであろう熱による刺激などを加えたところ、著しい神経活動と行動の変化が見られたということです。この実験により、ニジマスには痛みを感じる痛覚受容体およびそれに付随する神経回路が存在すると断定しております。

また、魚には表情筋がないため認識しにくいものの、痛みにたいする行動、すなわち組織の損傷に対する反応は、哺乳類と比較してもさほど変わらないと述べています。少なくとも顔および頭部には58か所の痛みの受容体を確認したとエディンバラ大学、ロスリン研究所の研究チームは発表しています。

学者達かく語りき

先ほどご紹介した、エディンバラ大学、ロスリン研究所の研究の記事を紹介します。

魚は痛みを感じるか?

「魚は痛みを感じるか?」というタイトルどおり、今回の記事のテーマに真正面から取り組んだ本をご紹介します。著者は魚類学者でもあり、同じくニジマスを対象に研究成果を発表しています。また、痛みを感じるとはどういうことなのかなど、意識の領域に踏み込んで掘り下げているので、多角的に「痛み」のテーマについて考えることができるでしょう。

また、著者は科学者らしく「少なくともニジマスは」痛みを感じるとしています。しかし、著者の結論を信じるならば、常識的には魚全般に痛みがあると考えざるを得ないでしょう。

魚の痛点と痛覚

それでは改めて、先ほどご紹介したエディンバラ大学、ロスリン研究所の研究をさらに深く掘り下げていきます。

顔や頭の上には「侵害受容器」があった!

58か所のうち22か所は侵害受容器として分類できると研究チームは述べています。すなわち、摂氏40℃の熱をニジマスに加えたところ、22か所が組織への侵害としてこれを検知したと言えるということです。

ヒトにもある「ポリモーダル受容器」もあった!

ポリモーダル受容器は、爬虫類・鳥類・ヒトが持っている原始的な感覚受容体の名称です。この感覚需要帯があることにより、先ほどの熱などによる「機械的刺激」といわれる刺激に対して痛みを感じたり、化学物質など体に有害な影響を与える刺激に対して反応をします。ポリモーダル受容器も侵害受容器の一種ですが、非侵害レベルにまで反応できる特徴があります。

このポリモーダル受容器の存在が魚にあるかどうかを確認するために、ニジマスに酸を注入したところ、ニジマスは水槽に唇を擦りつけるなどの行動を見せました。これは痛みに対する単なる「反射」ではなく、痛みを逃れるために行う「反応」であると研究チームは結論付けました。したがって、少なくとニジマスにはポリモーダル受容器があるということになります。

痛みとはなんであるか?

人間が痛みを感じるプロセスをここで改めて確認しておきましょう。例えば、あたたが庭を歩いていると、美しいバラがあり思わず手を伸ばしたとします。すると「チクリ」と指先に痛みが走り、あなたは「痛い」といって手を引きます。この間に、何が起きたのでしょうか。

痛みが伝わるプロセス

では人間の痛みが伝わるプロセスを見ていきましょう。

1.バラのトゲにより、指先の細胞が破壊されます。

2.「発痛物質」が発生します。発痛物質とはカリウムイオン、セロトニン、アセチルコリンなどがあります。

3.この物質が、痛覚の神経の末端に到達します。ここは自律神経終末とも呼ばれます。

4.この痛覚の神経が、痛みの情報を電気信号に変換します。

5.電気信号が、脊髄と視床を通過し、脳に到達します。

6.大脳皮質の体性感覚野は届いた電気信号を解釈し、「どこで、どんな痛みが発生したのか」という情報に変換します。

7.この変換された情報により、はじめて「痛い」と認識します。

8.バラから反射的に手を引くなどの反応が起きます。

脳が痛みを作り出す

魚に痛覚神経はある?ない?魚の痛覚と痛点の場所

痛覚のプロセスを説明しましたが、ポイントとしては、結局痛みを作り出しているのは脳であるということです。したがって、先述したように痛覚があったとしても、昆虫には脊髄がないから痛みが伝わらないのだという説があったり、痛覚があったとしても人間のように苦しんでいるとは限らないという説も可能といえます。

また、体を守るための反応があったとしても、傷を深くしないなどの生存のための反応であって、痛みを感じているのとは違うのだということもできるでしょう。

さらに、人間ほど高度な知能を持つと、傷の状態を目で見ることによって痛みが増すということもあるでしょう。この場合、先ほどのプロセスが終了した後の二次的な反応ということになります。また、人間の場合、錯覚によって痛みを作り出すということも可能です。極端な例では、やけどをしたと誤って認識させると、皮膚にやけどと同じ症状が現れたという研究結果もあるほどです。

このため、痛みとは意識の領域にまで解明する必要があるといえるでしょう。したがって、魚の痛覚を人間の認知に置き換えるということはかなりの困難を伴うということがお分かりになることでしょう。

魚以外の痛覚は?虫、エビ、タコなどは??

科学的には、魚には痛覚があると考える方が、現在では有力な説といえるでしょう。しかし、痛覚の存在は、最終的には脳、意識と関係してきます。このため、痛覚と痛みを感じるというのは別の問題であり、他種がどう感じているかを理解することはなかなか容易ではありません。

ここからは、そんな状況を踏まえて、もし魚が痛みを感じるとしたらという想像で、科学的な実証などから少し離れて、軽い話題をお届けしましょう。

例えば、魚の痛覚がそうなら、他の生き物はどうだろうと考える方もいるでしょう。それでは、虫の痛覚はどうなのでしょうか。あるいは、カニやエビなどの甲殻類の痛覚はどうでしょうか。またタコやイカなどの軟体動物は、なんとなく痛みを感じていないイメージを持つ方が多いですが、実際は痛覚が存在するのでしょうか。

どの分野でも、研究をしている方は世界中にいます。ここでは、最近の研究結果を参考にして、他の生物がどのように痛みを感じているのか、あるいはいないのかを考えてみましょう。

虫は痛みを感じない?

子供の頃、一度は虫に対して残酷な行為をしたことがありませんか。男の子は昆虫採集などをすることが多いので思い当る節があるでしょう。あるいは麗しき淑女でも、年に数回は台所などに突然現れる「G」と戦いを交えている方も多いことでしょう。このとき虫が傷つくと、もがいているように感じてしまうのは、人間が自分の感情を投射しているせいなのでしょうか。

また、足や手を失った昆虫が、あたかも痛覚がなく痛みを感じていないかのように、歩行をつづけたりする様子を見たことがある方もおおいでしょう。これらを見ると、逆に、虫は痛みを感じていないとも考えられます。

虫が痛みを感じないとする説の大きな拠り所は、脊柱動物と違い痛みを伝達される経路がないという点です。たしかに交尾中のカマキリは、当のメスに食べられながらも交尾を続行することで知られています。これは、個々の生命より種の保存の本能が優先されるからなのでしょうか。現在、虫に痛覚があるかどうか結論は出ていません

痛覚があることと「痛い」「苦しい」は別

虫の痛覚についてははっきりとは分からないものの、魚と同じように、痛覚に対する研究は進んでいます。ショウジョウバエの研究によると、痛みを感じるであろう刺激にたいする反応があることが明らかになってきています。また、ゴキブリに鎮静剤を投与したところ、刺激に対する反応が鈍くなったとの報告もあります。

ただし、痛覚があり検知するということと「苦しい」「痛い」ということは意味合いが異なります。したがって、他の生物がどう認知しているのかということ理解するというのは非常に難しい問題です。

これは、人間は三次元で世界を認識しているが、果たして虫は何次元で世界を認識するだろうかという根源的な問いにまでさかのぼる問題であり、痛覚があっても、実際のところは分かりません。このため、半分冗談で言えば、例えば体が半分になった交尾中のカマキリに「How are you doing?」とインタビューして見なければ分からないのだ、というほど大きな壁があると言えるでしょう。

甲殻類

カニや、エビなど甲殻類も痛みを感じるとの研究結果が出ています。このため、ザリガニやロブスターなども同じということになります。クイーンズ大学ベルファストで実験対象に選ばれたのは、ヤドカリです。電気信号を与え続けると、ついには自らの殻を捨てて逃げ出したという結果から痛みを感じているのではないかと結論づけています。

この研究を行った教授は、「生きたまま茹でられていた調理法は倫理的に問題があるのではなかろうか」と警鐘を鳴らしてもいます。

軟体動物

イカやタコについても、刺激を検知するという意味では痛覚はあると考えられています。そうでなければ、足を切断されても何の反応もないはずですし、タコが墨を吐いたり防衛反応を示すことはないでしょう。

しかし、「痛み」を感じるかどうかは、や軟体動物の意識とはどのようなものかを解明しなければならないため、やはりカマキリ同様、イカやタコの立場になってみない事には最終的には分からないとは言えるでしょう。

とはいえ、科学技術は発達してきており、電気信号や分子レベルで人間との共通点を見つけていくなどによって、他種の認知を人類の言語に置き換えていくという試みが続いて行くことでしょう。

魚の「痛い」シチュエーション4選

ここまで、魚や虫の痛覚と痛みについて解説してきました。普段考えることのない問題であるとは思いますが、いかがでしたでしょうか。もし、魚に痛覚があり痛みを感じるとしたら、どうなってしまうのでしょう。我々は、動物に対してと同じように倫理とモラルが問われるのでしょうか。動物愛護法だけでなく魚愛護法も制定しなければならないのでしょうか。

将来においては、有名な環境保護団体にクジラやイルカだけでなく、「マグロ支部」あるいは「サンマ課」が設立される日がやってくるのでしょうか。そして、カツオ一本釣りの漁船と一悶着があったり、寿司屋の前でシュプレヒコールが鳴りやまないなどという事態が起きるのでしょうか。

活け造り

実は、まんざら冗談ではなく、「他の種に対する人類の責任」は大真面目に議論されています。そうであるならば、日本が誇る食文化「活け造り」はどのような批判にさらされるかと心配にもなります。

日本ユニセフ協会大使であり、清純なアイドルでもあったアグネス・チャンさんが、かつて日本にやってきた際に「公園にいるハトを見て、おいしそうと思った」と語ったエピソードを聞き、眉をひそめた日本人は多いと聞きます。しかし、わが身を振り返ってみると、一般的な日本人の感覚では「活け造り」はごちそう以外の何物でもありません。

釣り針

「大きくなってまたファイトしよう」こんなことを言って、キャッチ&リリースを行っている釣り人は、魚の痛覚を思うと許しがたき人非人になる時代がくるのでしょうか。先ほどご紹介した研究が正しいならば、釣られた魚は苦しみもがいているということになります。遠い将来において「釣りバカ日誌」シリーズがR15指定になる日がやってくるのかも知れません。

また、カナダの伝説的ピアニスト、グレン・グールドは幼少期に父親に釣りに連れていかれた際、ボートにのた打ち回る魚を見て、痙攣発作を起こします。後年、彼は釣り人が群がる湖の水面をモーターボートで爆走し、魚を逃がすという運動を続けるようになりました。これは傲慢な人間に対する啓蒙活動でもあるといいます。

クラシック音楽の革新者であったグレン・グールドは、魚の痛みという問題においても革新者として歴史に名を残すことになるのでしょうか。

シロウオの踊り食い

爽やかな春の風物誌「シロウオの踊り食い」も、もし魚に痛覚があり痛みを感じているならば、魚にとって大変な状況になっていることでしょう。噛まれずに飲み込まれたシロウオも胃液によって、長い苦しみを感じていることでしょう。なお、活きたままのお寿司もあります。

呼叫魚

残酷といわれる魚の食べ方は、なにも日本に限った話ではありません。呼叫魚と呼ばれる中国料理は、胴体部分のみから揚げした状態でお皿にもられるため、魚はまだ生きており口をパクパクさせる様子からこの名前が付けられています。残酷という批判に対して、お店の人の言い分は「日本人やフランス人も似たようなことをしている」とのことでした。ごもっともな意見です。

ギョギョ!?魚も痛いの??

今回は、魚と痛覚というテーマについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。最近の研究によると、魚に痛覚が存在するという側に軍配が上がってきています。魚に痛覚はないと思っていた方は、ショックを受けたのではないでしょうか。おいしそうなお刺身を見る目が、しばしの間変わる方もおられるでしょう。

こうなると、かつて牛や豚の屠殺方法について倫理的なアプローチがされたように、魚についても思案をめぐらせる時代がやってくるともいえるでしょう。「魚愛護法」が適応されることもあり得るでしょうし、ハンターと同じく釣り人が野蛮人扱いされる時代がやってこないとは言いきれないでしょう。

では、私たちはベジタリアンにならなければならないのでしょうか。しかし、植物の世界においても、例えば木が伐採されたときには普段には見られない警戒信号を、他の木々に対して発しているという研究成果も出てきています。

あまりに信号の伝達がゆっくりなので、人間はなかなかシグナルを認識できないということです。それならば、植物も痛覚があり、痛みを感じているという可能性があるでしょう。

科学の進歩は他種の認知の仕組みを理解するところまで進んできました。それは、人類の倫理や道徳観を一変させることでしょう。この機会に魚の痛覚、そして痛みについて、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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