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【種類別】舞台における「上手」と「下手」の位置・由来

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カテゴリ:芸能・エンタメ

初回公開日:2018年02月19日

更新日:2020年05月19日

記載されている内容は2018年02月19日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。

また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

【種類別】舞台における「上手」と「下手」の位置・由来

舞台やステージにおける「上手」と「下手」の位置

演劇やミュージカルなどの舞台用語に「上手」と「下手」という言葉があります。これは「じょうず」「へた」ではなく、「かみて」「しもて」と読みます。

これは舞台上の左右を区別する言葉です。舞台上の役者と客席の観客では、向いている方向が逆なので演出家に「右から登場して」「左から退場して」と言われても、混乱してしまいます。

そこで「上手から登場」「下手に退場」という事によってスムーズに演出が行えます。

どっちが「上手」でどっちが「下手」?

結論から言うと、客席から見て、右側が「上手」で、左側が「下手」です。なぜ右が「上手」で左が「下手」かというと、昔の日本の身分による立ち位置に関係していると考えられています。

天皇の次の位は大臣ですが、「右大臣」「左大臣」の位があり、左大臣の方が上位でした。この「左」は「天皇から見て左」です。お雛様の飾りつけでは、右大臣が左側で、左大臣が右側なのは天皇(お内裏様)から見ての左右になります。雛壇を舞台になぞらえると、上手側に位が高い人がいる事になります。

また、日本における舞台演劇の源流である「能舞台」では、下手側に出入り口があります。座席を決める際に、身分の高い人から出入り口から一番遠い「上座」に座り、低い人は出入り口に近い「下座」に座ります。能舞台の出入り口側が「下手」で、遠いところが「上手」と覚えておきましょう。

英語表現では客席を向いている

「上手」「下手」は日本の伝統芸能や文化に由来した言葉ですが、英語ではどう表現するかというと、日本とは逆に「ステージ上から客席側を見て右・左」で表現します。言葉もそのまま下手は「stage right(ステージ・ライト)」で、上手は「stage left(ステージ・レフト)」です。

また日本の伝統芸能では、役者の配置が事細かに決まっていて、身分が高い人が上手に配置されますが、西洋の演劇では特にその限りではありません。

「上手」「下手」の由来

天皇から見て左の方が位が高いから「上手」、右は「下手」という文化が日本にはあったと紹介しましたが、ではなぜそのような位置関係ができたかと言うと、元々は中国の言葉で「天子は南面す」というものがありました。

天子(皇帝)は北極星を背にして、南を向くべきだという言葉で、日本も中国を参考に都を作るときに、天皇の座は南向きにしました。

当初、中国では右が優位でした。これは中国を代表する河川である「黄河」と「揚子江」が西から東に向かって流れているからで、南向きの皇帝にとっては右から左に流れています。その事から右を優位にしましたが、新しい王朝が立つと、前の王朝を否定するために左右の優位性を逆にする事もたびたびありました。

日本が左を優位にしたのは、東(天皇から見て左)から太陽が昇るからと言われています。

部屋が南向きだから「上手」「下手」が使われる

南を向いているのは、天皇だけではありません。古い神社などはだいたい南向きでした。そして演劇は神に奉納するため、神社で行われたのが始まりです。なので劇場を建てる時も、舞台は南側を向いていました。

太陽神であるアマテラスにアマノウズメが歌舞を披露したのが芸能の始まりなので、神社で行う演劇も南を向いて行ったという説もありますが、単に野外で行う場合、南向きの方が明るかったという考えもあります。

諸説はありますが、「南向き」という背景があるため「上手」「下手」という表現がすんなりと受け入れられたのでしょう。

「上手」「下手」の立ち位置

舞台やTV番組、ライブやコンサートなど、演出には「立ち位置」が付き物です。役割によって「上手」と「下手」に立ち位置の決まりはあるのでしょうか。普段なにげなく目にするポジショニングの意味を紹介します。

司会者の立ち位置はどっち?

コンサートや発表会の場合、司会者が舞台上で進行する場合があります。この場合、司会者は「上手」と「下手」、どちらに立つ事が正解でしょう。

これは「主役」を考えると分かり易いです。司会はあくまで進行役で、サポートする役割にあります。なのでゲストや発表者が上手にいて、司会は下手にいるのが正解です。

テレビ番組でも、バラエティのトーク番組や大御所司会者など、司会者の力量が試されるような番組の場合、司会者が主役なので画面の右(上手)にいる事が多いですが、歌番組やクイズ番組など、ゲストが中心の番組では司会者は画面の左(下手)にいる事が多いです。

バンドのライブでの立ち位置

ロックバンドでは、上手にギター、下手がベースの場合が多いですが、これがこのような配置になったのは、さまざまな起源の説があります。

まずバンドの花形といえば、ヴォーカルの次にギターなので、上記の「上手側に身分の高い人」という芸能文化から、花形であるギタリストが上手にいるという説です。しかし右左で身分があるのは日本の文化であり、ロックバンドの発祥は国外になります。国外のバンドもこの立ち位置になっている理由にはなりません。

次に多いのが「ビートルズ発祥説」です。伝説のロックバンド、ビートルズがこの立ち位置だったので定着したという説です。他にも、「ベースが下手側の方が、ドラムとアイコンタクトしやすい」などの説もあります。

アイドルの立ち位置の法則

現在、「アイドル戦国時代」と称されるように、さまざまなアイドルグループがあります。その際に重要になるのが立ち位置です。

人気のあるアイドルは「センター」と呼ばれる中央に位置していて、その位置を獲得するために日々努力する様子を、アイドルファンが応援するという関係はしばしば見聞きします。ではセンターから遠ざかるほど人気がないのかというと、必ずしもそうとは限りません。

あるアイドルグループではセンターの子を中心に、左右に体型が似ているアイドルを配置し、シンメトリーになるようにポジショニングしています。

そしてポジショニングが決まると、そのアイドルのファンも、アイドルの立ち位置に合わせて場所取りをするので、定着してからあえて上手下手を入れ替えて、アイドルにもファンにも新鮮な景色を見せるという手法もあります。

漫才の「上手」と「下手」

お笑い芸人で漫才師の場合、二人の立ち位置が「上手」「下手」のどちらかが決まっています。大抵の場合、ボケが下手で、ツッコミが上手です。その理由はさまざまですが、大きな理由としては「右利きの人が多いから」でしょう。

客席の方を向きながら相手を右手で叩こうとすると、ボケ役の人は右側(下手側)にいた方が叩きやすいからです。ボケとツッコミの上手・下手が逆のコンビの場合、ツッコミが左利きだったり、叩くときに向かい合っていたり、もしくは叩かない芸風のコンビであったりします。

落語における「上手」と「下手」

落語の寄席は、通常一人が舞台に座って話すので、「上手」「下手」のポジショニングとは関係ないと思われがちですが、実は明確な決まりがあります。

例えば、戸を開ける仕草をするとき、日本の伝統的な舞台演劇は、かならず出入り口は下手側にあるので、落語でも上手側を向いて戸を開ける仕草をします。そして会話のシーンも、年下や身分の低い役の時は上手側を向いて、年上や身分の高い人の役の時は下手側を向いて演技をします。

映像の原則における「上手」と「下手」の意味

「上手」「下手」という概念は、舞台だけではなく、映像にも取り入れられました。そしてそこにはより深い意味付けもされました。

アニメ監督、富野由悠季の「映像の原則」

機動戦士ガンダムシリーズの生みの親である、富野由悠季監督は、上手下手に関する手法を、著書である「映像の原則」で公開しました。それによると、アニメにかぎらず映像作品には、ポジションによって心理的な演出を施すことができます。

上手側にいるキャラクターは上位(ポジティブ)な印象を与えます。強大であり、安心感であったり、とても自然なものだったりします。一方下手側にいるキャラクターは下位(ネガティブ)な印象です。弱小であり、不安感であったり、とても不自然なものだったりです。

そして上手から下手に向かう演出は「上から下へ」「自然な流れ」「敗北」「絶望へ向かう」といったイメージであり、下手から上手に向かう演出は「下から上へ」「逆行」「勝利」「未来への希望」といったイメージにつながります。

ゲームでの映像の原則

格闘ゲームやアクションゲームも、映像の法則に基づいていると言えます。たとえば「ストリートファイター」などの2D格闘ゲームは、多くの場合、プレイヤーが下手側、敵キャラが上手側です。プレーヤーは勝利を目指すので、画面の右(上手側)を向いているとも言えます。

「スーパーマリオシリーズ」などのアクションゲームも、プレイキャラは下手から上手へ進んで行きます。こうしたちょっとした法則を知って、アニメやゲーム、映画やTV番組を観ると、より深いところに気づくでしょう。

相撲での「上手」と「下手」

日本伝統のスポーツ、「相撲」にも「上手」と「下手」がありますが、これは「かみて」「しもて」ではなく、「うわて」「したて」と読み、立ち位置ではなく技のかけ方になります。

相撲でお互いの廻しを掴んで組み合う事はよくありますが、その時に相手の腕の内側に自分の腕が入っていたら「下手」、外側なら「上手」です。両腕とも下手なら「両差し(もろざし)」と呼ばれ、上手なら「外四つ」「両上手」と呼ばれます。

右手が下手、左手が上手の場合「右四つ」、逆なら「左四つ」と呼ばれ、両者がそれぞれ「右四つ」「左四つ」なら「相四つ」、両者とも同じなら「喧嘩四つ」になります。

上手で組んだ腕で投げる事を「上手投げ」、下手で組んだ腕で投げることを「下手投げ」と言います。

位置関係を把握しよう

舞台における「上手」と「下手」ですが、その言葉の意味は舞台演劇に興味がない人でも、使う事が多い便利な表現です。

ビジネスや会食などの改まった場で、席や立ち位置に迷ったら、ぜひこの記事を思い出してみましょう。「舞台の出入り口は下手側」「舞台の上手側が身分の高い人」と覚えていれば、結婚式や会議などの席順には、もう困りません。

また自分で写真や映像や絵を書く時や見る時には画面の位置にも気をつけてみましょう。ネガティブなものなら画面の左側、ポジティブなものなら右側と覚えておくと、作品により深みが増すでしょう。