原体験ってなに?

昔の子ども達は、自然の中での主体的、自主的な遊びとして経験できていた原体験ですが、現在の子ども達は自然の中で遊ぶことが減り、この原体験(直接体験)が絶対的に不足しています。
そのため、テレビやインターネット、教科書などから学ぶ間接体験が多い現代の子ども達には、実際に触ったり、臭いをかいだり、味わったりという原体験(直接体験)が生きる力を養うためにもとても重要と言えるでしょう。
原体験の8つの意味とは
水の体験
また、海や川で泳いだ時に感じる流れや、急に深くなって足がつかなくなった時に怖いと感じることからも、色々な経験をする事ができます。
木の体験
季節によって木の葉の色が変わること、落ち葉となった時の感触の違い、色々な移り変わりを見ることも学びにつながります。
倒れた木から新芽がでていたり、腐って折れた幹の下に虫がいることに気づいたり、木やそこに関わるものの生と死の連鎖についても感じることができます。
草の体験
笹で作った笹舟や、草で作った草笛などで遊んだり、草笛を口に入れた時の味の記憶、草原に寝そべった時の感触など、色々な体験があります。
石の体験
投げた時の重さや、投げた後に地面にぶつかった音を聞く、石と石をぶつけ合うと欠けるもろい石があることを知ったり、種類や形による割れ方の違いなどに想いをはせたり、想像力を働かせるという体験もできます。
土の体験
また、土を掘っていた時に急に虫がでてきてビックリしたという体験も、学びにつながります。
火の体験
火に近づいた時の熱さ、怖さや危険を感じること、小さな火が大きくなっていく様子を見る、火をつけると煙がでて、煙が目に入るとしみるという体験など、火からも色々な体験ができます。
動物の体験
動物の匂いや毛の感触、鳴き声の違いを知ったり匂いを嗅ぐ体験からは生き物の多様性を知ることができるでしょう。ペットや生き物の死を通して、その悲しみを乗り越えていく体験ができます。
ゼロの体験
電気の明かりのない真っ暗闇への恐怖、エアコンではコントロールできない極端な寒さや暑さ、いつでも食べ物が手に入る現代ではなかなか感じることのない、たくさん歩いてお腹がぺこぺこになった、喉がカラカラで辛い、というような極限状態の体験も大事な経験です。
原体験プログラムにはこんなものがあります
高原での自然遊び
スタッフから動物の上手な触れ合い方を教わったり、ドックランで走り回る犬たちを見ることもできます。また、保護された犬や猫と触れあったり、お散歩をさせる体験もできます。
ティアガルデンにあるツリーハウスやベンチは、みんなと一緒に何かを作るという体験としてワークショップで子ども達に作られた物です。また、自然の恵みを感じる体験として、飼育されている牛のミルクで作られたアイスクリームを楽しむことができます。
森林セラピーコースでは、ハンモックに揺られてリラックスしたり、森林浴で癒やされましょう。夜になれば暗闇や静寂を感じる原体験の1つ、ゼロ体験も経験することができます。
トヨタ原体験プログラム
例えば4年生向けのプログラムでは、1時間目に体育館で空気エンジンカーを使い、パワーの実験やコントロールの実験をします。この実験から空気エンジンカーのパワーのすごさを感じたり、コントロールの難しさを感じることができます。
その後、車の基礎知識を映像で学び、2時間目には校庭にでて、実際に本物の車を使った実験をします。車をみんなで引っ張ったり、本物のエンジン音を間近で聞くなどして、車のパワーを実感することでしょう。
本物の車をつかったスラローム走行を観察して、室内で実験したコントロール機能を体感したり、代表児童が乗車体験をするなどして、車を通した五感を刺激する原体験が用意されています。
教育に原体験って?
幼児・早期教育と原体験
早いうちから文字が読める、漢字が書ける、計算ができるなどの能力は、実は脳の一部だけを刺激して鍛えているもので、小学校4年生頃には消えてしまい周りに追いつかれると脳科学で照明されています。
一方、家族でキャンプをしたり自然の中で遊ぶという経験はさまざま原体験をすることができてです。原体験により脳をバランスよく鍛えて生きる力を養います。
キャンプでは仲間と協力してテントを設置したり、食事の用意することで協調性や創造力を養えます。火おこしの経験は火の怖さや熱さ、便利さを感じる火の原体験になります。
大自然の中でのキャンプでは、夜の暗闇や雨風によるゼロ体験、虫を見つけたり草花や石や木での遊びを通して、8つの原体験をバランスよく体験することができます。
心理学で考える原体験の効果とは
親になるための準備としての原体験
子どもに関する心理学の研究が多くされているなかで、親自身の発達に関する研究はほとんどなされていません。
しかし心理学的に見ると、親としての発達はこどもの頃から始まっていて、子どもの頃の原体験の重要性が見直されています。
原体験の就活や仕事探しへの影響って?
志望動機にインパクトをプラス
例えば、幼い頃に自然の中でたくさん遊んだ日々の中で、地球の温暖化の影響を目の当たりにしてショックをうけた、そのため環境を守る仕事がしたいと環境系の学部のある大学に進学し、環境問題に関係する仕事を志すことになったという事があったとします。
このように、自分の考え方に影響を与えた原体験や、その仕事をしたいと思うきっかけになった原体験を含めて話をすると、面接官に強いインパクトを与え、志望理由に一貫性を持たせる事ができます。
また、仕事探しをする時に原体験によって興味や関心を持ったことに沿って探すと、漠然と仕事探しをするよりも職種や業種を絞ることができ、就職活動がよりやりやすくなるでしょう。
就職後の自分の支えになる
また、仕事で悩んだり壁にぶつかった時には、原体験という原点に立ち返ることで自分を取り戻したり、初心に返って壁を乗り越えることもできるでしょう。
また、仕事に対するビジョンがしっかりしているので周りの人へもいい影響を与えることができ、周りの人からの協力も得やすくなると言えます。
原体験のない人に見られる特徴って?
原体験のある人は芯がぶれず、しっかりとした目的や思いを持っていることが多い反面、原体験がない人は軸が定まらずふわふらした印象があり、やりたい事がわからずあれもこれもと始めるけれど続かないといった特徴が見られることが多いです。
原体験に関する本4選
からだを感じるあそび事典
ふるさとを感じるあそび事典
わくわくサイエンス・マジック
子ども向けに簡単に科学・物理を解説している。大人が子どもの疑問に答えるのに最適。
The Journey
まさに一人一人の人生という旅をテーマに、良いリズムで展開していくオムニバス感がサイコーです。
原体験を通して生きる力を育もう
難しい事をしなくても、色々と準備をしなくても、日々の生活の中や遊びの中に、原体験があるという事も気づいていただけたでしょう。
危ないから、汚いから、心配だからとついつい止めてしまいがちな遊びの一つ一つが、子ども達にとっては大切な原体験となります。大人も、自分が子どもの頃に返った気持ちになって、家族一緒に自然の中での原体験を楽しんでみてください。
テレビやインターネットからの情報による間接体験による知識にプラスして、自然と触れあう色々な原体験を通して、子ども達の生きる力を育んでいきましょう。