共感覚とはどんな感覚?
共感覚は、「シナスタジアーsynesthesia, synæsthesia」といい、感性間知覚とも訳されます。英語名の「synesthesia」は、ギリシャ語の「共同ーsyn」と「感覚ーaesthesis」を意味する言葉から名付けられています。
ある感覚に対して、通常の感覚だけでなく、別の感覚も同時に起きる知覚現象が共感覚と呼ばれる現象です。たとえば、音を聴いて色を感じるなど(色聴)です。
どんな共感覚が存在する?
共感覚の中でも少数派なのが、ミラータッチと呼ばれる共感覚です。これは、人を視界に捉えただけで触覚を覚えてしまう共感覚で、例の少ない現象です。
共感覚と一口に言っても、まだ確認されていない感覚もあり、どれくらい種類があるのかは、分かっていません。今後増えていく可能性も十分考えられます。
共感覚は珍しくない感覚
人の感覚は五感だけではありません。一説によると共感覚の種類は60種類以上もあるとされています。なにかの弾みに感覚がリンクすれば、それは共感覚です。共感覚の現象の現れ方にも差があり、生活に支障を来たすレベルでない「軽い」共感覚の持ち主は、かなりの人数が潜在的にいるとされています。
あなたに共感覚があるかどうか診断してみよう
味や香りに色を感じる共感覚の持ち主もいます。そういった現象は、日常生活の中でも確認できます。テストの結果、共感覚者だとしても不思議ではありません。軽度の共感覚の持ち主なら、自分自身も気がついていない可能性も捨てきれません。
どうしても気になるなら、きちんとした機関で調べてもらいましょう。現在、日常生活を問題なく送っているなら、気にすることはありません。
共感覚の有無を確認できるサイト
たとえば、詩人のアルチュール・ランボーは、「A は黒、E は白、I は赤、U は緑、O は青」と表現しています。日本には、漢字、カタカナ、ひらがななどがあり、さらに複雑に多彩な色聴があるとする研究者もいます。
「あ」が赤く見える共感覚者、別の色に見える共感覚者など、人によって感じる色、形に統一感はないとされています。
共感覚を身につけるトレーニング方法
被験者は、共感覚を体験したことのない学生で、訓練を受けることで共感覚を獲得可能か否かが調査されました。その結果、何人かの学生が共感覚を経験し、テストにおいても共感覚者として好記録を出してます。
この結果からも後天的に共感覚を身につけることは可能だと考えられます。しかし、実際に共感覚を持っている人たちと同様の感覚なのか否かは、確かめる術はありません。
共感覚がある人の割合は?
共感覚の研究が始まったのは、ごく最近のことです。そのため、どのくらいの割合で共感覚の持ち主が存在しているのかは、定かではありません。
音が色として見える、色が音として聞こえる共感覚の持ち主は、人口の約4%と推測されています。しかし、2000人に1人、200人に1人などとも言われ、正確な数はハッキリしていません。芸術家や詩人、小説家などの中には、共感覚を持っている人の割合が、一般人の7倍ほどだとする説もあります。
男女比は1:6で、圧倒的に女性の方が多いとされていますが、女性の方が共感覚について自己開示しやすい傾向のためだとする研究者もいます。実際には1:2ほどの比率だとされています。
共感覚がある人の特徴とは?
・ある特定の刺激が共感覚を引き起こす
・共感覚は自動的に起こり、抑制することは困難
・共感覚は意識的な感覚に似ている
・時間を超えて、一貫性がある
他には、共感覚は「一方向的」とされています。たとえば、ある文字を見て色を感じる色字共感覚はありますが、色を見て文字が見える共感覚は存在していません。
共感覚者は天才?頭がいい?
アスペルガー症候群の少年が円周率を20,000桁以上記憶する際、「頭の中で数字の風景がどんどん広がり、進むにつれて変化していった」「数字はそれぞれ形や色や肌触りがあり、情報を視覚化できるので記憶しやすい」と語っています。
共感覚が記憶に役立つことは、かなり知られています。しかし、すべての共感覚者に起こる現象ではありません。「特別な能力」を持っている共感覚者はいますが、共感覚者のすべてに当てはまるわけではありません。
共感覚を知るための本
共感覚の研究者が書いた本、著者本人が共感覚者の本など、タイプもさまざまです。日本では有名な共感覚者が書いた本ですが、本国では「フェイク」とされているものもあります。
ねこは青、子ねこは黄緑
他の研究者の人たちとの対談や共感覚者たちへのインタビューなども、共感覚とはなにかを知る上で貴重な情報となっています。
文字が色つきに見える、音を聞くと色が見える、不思議な能力についての本。
著者は共感覚を持った人で、その具体的な事象について詳しく書かれている。
共感覚者の「見た目」どおりに色を着色したアルファベットの画像は貴重。
共感覚という神秘的な世界
共感覚を神秘的なものと捉え、製作活動に繋がるとする人がいる反面、単なる連想だととてもドライに、現実的に捉える人もいます。共感覚者の中でも意見が分かれ、人それぞれな点もとても興味深く読める内容です。
この本で気づいたのは、いろいろなパターンの共感覚者がいるが、どうも
大きく、重症と軽症の2つに分けられる気がする。
「軽症」は、文字や数字、音、曜日、月の名前などにいつも決まった色を感じる人
これにプラスし、数字や時間の概念に空間配置が伴う人もいる。
「重症」は数字、音楽に誘発され、カラフルな光や図形がうごめく、決まった映像を見る人。この人たちは、上のレビュアーの方のように、共感覚のことをかなり重く、神秘体験と受け止め、思い入れも深い。
共感覚者の驚くべき日常―形を味わう人、色を聴く人
味にさわる、音を見る、文字が立体の幾何学に見えるなど、とても個性的な共感覚の世界ですが、本人が告白しない限り、誰にも知られることはない現象です。そして、その多くは普通に日常生活を送っています。彼らの脳の中で、一体なにが起こっているのかを検証しています。
共感覚者の脳の研究をし始めた著者が、共感覚に対して科学的なアプローチをしています。内容が専門的で少し読みづらい箇所もありますが、とても論理的な内容です。きちんとデータで確認したい人には本です。
以前色彩理論の本で共感覚の言及があり、興味があって読んでみました。
芸術家に共感覚がある人が多いのではと予測していたのですが、事実そのようです。
共感覚者といっても皆が同一に「ソ」の音に同じ色を感じるのではなく、各自で違う感じ方をするということが新発見でした。
後半からは実験を通じて、共感覚の原因を探ってゆく過程が、とても面白いです。
また、著者は医師という科学者の立場でありながら、情動も重視するオープンな観点が良いと思いました。
共感覚は遺伝する?
一卵性双生児のうち、一人は共感覚の持ち主になり、もう一人は発現しなかったケースもあります。しかし、二人とも共感覚の一種である色字共感覚の持ち主になったケースもあり、遺伝以外の要因が関与している可能性もあるとされています。
共感覚を活かす方法はある?
シェイクスピアは、言語共感覚の持ち主だったと言われます。それは「苦い寒さ」「優しさで女房を絞めていく」などの独特のセリフからも連想されます。高等教育を受けていなかったシェイクスピアが人々に愛される作品を世に出せたのは、共感覚者だったからだとする人もいます。
本来はみんなが共感覚をもっている
テスト勉強中に「色で覚えれば簡単じゃない」と友だちに言って怪訝な顔をされ、それっきり口を閉ざす子どももいます。共感覚が今以上に一般的になれば、共感覚者もそうでない人にとっても、もっと豊かな世界が広がるはずです。