Search

検索したいワードを入力してください

独壇場と独擅場の違い・由来・元々正しかったのはどちらか

Author nopic icon滝口 流子
ビジネス用語 / 2018年05月04日
独壇場と独擅場の違い・由来・元々正しかったのはどちらか

わかりますか?独壇場と独擅場の違い

独壇場と独擅場の違い・由来・元々正しかったのはどちらか

日常生活の中で、ある人の活躍が目立って他の追随を許さない場合に「今朝の会議は、彼の独壇場だったよ。誰も反論できないのだから。」などといった会話を耳にすることがあるでしょう。この「独壇場」とよく似た言葉として知られるのが「独擅場」です。一見して見分けがつきにくいため、どちらが正しいのか迷ったことがある人も少なくないはずです。

そこで、「独壇場」と「独擅場」の違いを簡単にですが説明します。仕事上のマナーや教養としてはもちろんのこと、マメ知識として知っておいても損はないはずです。

独壇場と独擅場の読み方は?

独壇場と独擅場の違い・由来・元々正しかったのはどちらか

漢字が違う

独壇場には、「土=つちへん」の「壇」が使われています。音は「ダン・タン」で、意味は「土を高く盛ってつくり、上部を平らにならした土台」です。独壇場=ドクダンジョウと読みます。

一方の独擅場には、「扌=てへん」の「擅」が使われています。音は「セン・ゼン」で、意味は「ほしいままにする」です。独擅場=ドクセンジョウと読みます。

それぞれの意味は?

実は、現在使われている独壇場と独擅場は「同じ意味」です。そのひとだけが思うままに振る舞うことができる場所や場面。ひとり舞台。というのが、両者に共通している意味です。

独壇場と独擅場の由来

独壇場と独擅場の違い・由来・元々正しかったのはどちらか

しかし、独壇場と独擅場は最初から同じ意味で使われていたわけではありません。漢字は元々、現在の中国大陸にあった漢字文化圏から日本へ伝えられたものであることは良く知られています。

そこで、独壇場と独擅場の漢字から、本来持っていた言葉の意味を考えてみましょう。ここで注目すべきは「壇」と「擅」の字です。

独壇場の由来

「壇」は、土を高く盛ってつくった台や場所のことで、昔、天地の祭りや諸侯の会合・盟約、将軍や宰相の任命などを、この台の上で行っていました。「独」は、ひとり・ひとり者。「場」は、広く平らにした場所のこと。

つまり、「独壇場」はひとりの人が上がっている、一段高い場所を表しています。

独擅場の由来

一方の「擅」は、ほしいままにする・ひとりじめにする、つまり自由勝手な行いを意味する動詞です。同じように「独」は、ひとり・ひとり者。「場」は、広く平らにした場所のこと。

そうすると、「独擅場」はひとりの人が思うまま気ままに振る舞っている場所を表しています。

独壇場と独擅場はどちらが元々正しかったのか

独壇場と独擅場の違い・由来・元々正しかったのはどちらか

由来で見てきたように、元来「独壇場」という言葉だけでは、「独擅場」の持つ、思うまま・自由というニュアンスはありませんでした。それではなぜ、「独壇場」が「独擅場」と同じ意味を持つ言葉になったのでしょうか。

もともと独擅場が正しかった

ほしいままにする、を意味する「擅」の字は、戦後に定められた当用漢字や常用漢字表の一覧には記載がありません。つまり、「擅」の字は、多くの人にとって身近なものではなかったのでしょう。おそらく「独擅場」という言葉ぐらいでしか、目にすることがなかったのではないかと想像されます。

普段、馴染みのない漢字ならば、当然読み方を知っている人も少なかったはずです。そこで「独擅場」という、読み方のわからない漢字に出会った時に、ひとびとはこう考えました。

はじまりは読み間違い?

漢字は、分解すると「亻=にんべん」や「艹=くさかんむり」などの部首から成り立っています。別々の漢字を、同じ部首から、意味や音を類推することがあります。たとえば、「清」と「晴」は青の部分から「セイ」と読みますし、「宥」と「侑」も有の部分から「ユウ」と読みます。

そこで、「擅」の字の読み方がわからない場合、「擅」と似ている字面の漢字を思い起こしてみると、「土壇場」の「壇」という字に行き当たりました。「壇」は「ダン・タン」と読むので、「擅」も「ダン・タン」と読み、それまでにはなかった「独擅場」=ドクダンジョウという新しい読み方を生み出しました。

たまたま似ていた「土壇場」

この「土壇場」という言葉は、斬首刑を行うための土の壇のことで、派生して決断を迫られる最後の場面や、進退きわまった状況をも意味しました。「土壇場」は、近世の日本人には身近な言葉であり、「独擅場」と「土壇場」の字面が似ていたために、「擅」と「壇」の字の混用は、戦前から多発していたのでしょう。

また、「壇」の字が意味する土の台が、人が立つ舞台をも表すようになり、「独擅場」の持つひとり舞台のニュアンスと重なって混乱したのも、「壇」と「擅」の字を混用した原因のひとつだと考えられています。

独擅場から独壇場へ

独壇場と独擅場の違い・由来・元々正しかったのはどちらか

もともと独壇場は存在していなかった

やがて、「独擅場」=ドクダンジョウの読み方が大衆の間で定着してくると、「ダン」の音に引きずられて「独擅場」を「独壇場」と表記するようになりました。「ドクダンジョウ」という音を聞いて、思い浮かぶ「ダン」の字は「壇」が圧倒的に多かったのでしょう。

つまり、「独擅場」には本来なかった「ドクダンジョウ」という読み方が広まった結果、字形の違う「独壇場」という新しい言葉が生まれ、それ以降「独壇場=ドクダンジョウ」という言葉が広く浸透することとなりました。

他にもある誤用から広まった漢字たち

このように、漢字の読み方から新しい書き方が生まれることは、すでに明治・大正時代には報告されており、珍しいことではありません。それに、たとえ最初は間違った読み方を使う人が少数であっても、やがて多くの人が使うようになれば、新しい読み方や書き方が堂々と辞書に載ることになります。そうなると「間違い」は「間違い」ではなくなり、「正しい」書き方だと認められたことになります。

私たちが普段使っている言葉にも、同じような来歴を持つものがいくつかあります。知っていましたか?

例を見てみよう

元々の漢字読み方間違った読み方新しい書き方
洗滌せんできせんじょう洗浄
撒水さっすいさんすい散水
蔟生ぞくせいぞくせい族生

こうして見てみると、元々の漢字は画数が多く、難しそうなものが目立ちます。新しい書き方の漢字は、普段よく目にするし使うこともあるけれど、本来は違う漢字を使っていたことを知らなかった人も多いのでは?

独壇場と独擅場はどんな時に使われている?

独壇場と独擅場の違い・由来・元々正しかったのはどちらか

それでは次に、「独壇場」と「独擅場」が、どんな場面で使われているのかを見ていきます。

羨望の気持ちが込められている言葉

「独壇場」も「独擅場」も、現在は同じ意味で用いられており、ある人や組織が能力を発揮して思うままに振る舞うことができる場所・場面を表すことは、先に述べました。加えて、この言葉では、その人や組織が持つ能力が優れており、他を圧倒していることを認めています。

つまり、「独壇場」や「独擅場」が使われるのは、その能力を持つ人や組織を褒める場合や、能力の高さを引き合いにだす場面で使われることが多いです。

例文

・西洋絵画の話になると、彼の独壇場で、出る幕がない。
・A社の独擅場であった分野に、わが社も新規参入を検討するべきです。

などがあります。

類義語

つづいて、「独壇場」と「独擅場」に似た意味を持つ言葉をいくつかあげます。「独擅場」と「独擅場」の言葉が持つニュアンスをつかむ、手がかりにしてください。

独りがち

数人いるなかで一人だけが勝ちを得ること。

独走

・他を大きく引き離して先頭を走ること。

・ひとり自分勝手に振る舞うこと。

ひとり舞台

他の人の存在が薄くなるほど、ある一人の活躍が目立つこと。思うままに振る舞うこと。

「独り相撲」は似て非なるもの

ついでに、ここでひとつ付け加えておきますが「独り相撲」という言葉も、類義語のように見えますが、これは別物です。「独り相撲」には、空回りするという意味があり、その人の能力を認めているわけではありません。良い意味には取られないので、くれぐれも使い方には気をつけてください。

どちらを使っても間違いではない

独壇場と独擅場の違い・由来・元々正しかったのはどちらか

これまで見てきたように、現在では「独壇場」も「独擅場」も正しい表記であり、独擅場=ドクセンジョウと読むことも、ドクダンジョウと読むことも正解です。実際、TVのアナウンサーなども「ドクダンジョウ」という言葉を放送の中で使う場面に出会います。

言葉は変わるもの

言葉はあくまでも、人間が使う道具のひとつです。遠い距離や長い時間の中で、言葉が変化していくことは自然なことです。言葉を使う人間が変わっていくことによって、漢字の読み方が変わる、書き方が変わる、はたまた本来はなかった意味が次から次へと加わっていくことは、言葉の持っている性質で変えようがありません。

極端な話ですが、現在は「独壇場」と「独擅場」が存在していますが、将来「独擅場」という言葉が無くなってしまうことだってあり得ます。

独壇場と独擅場を使ってみる

独壇場と独擅場の違い・由来・元々正しかったのはどちらか

なんだか面倒?

さて、そうは言っても「独壇場」も「独擅場」も、どちらも「ドクダンジョウ」と読むのなら、難しく考えずに「独壇場=ドクダンジョウ」だけ覚えておけばいいや、なんて考えていませんか?せっかくなら、「独壇場=ドクダンジョウ」も「独擅場=ドクセンジョウ」も、両方読めるようになることをおすすめします。

さらに、機会があれば、どんどん使ってみてください。日常会話の中で口に出すなり、メールの文書で使うなり、使えばつかうほど、「独壇場」と「独擅場」は間違いなくあなたの身についていくはずです。そして、身についた言葉ほど、実感を伴って使いこなせるでしょう。

独壇場と独擅場を使って相手を褒めよう

「独壇場」と「独擅場」を仕事で使うのならば、同じ会社の上司にしろ、取引先の相手にしろ誰かを褒める場面でこそ、この言葉たちは本領を発揮するでしょう。

相手へのリスペクトを忘れずに

というのも、「独壇場」と「独擅場」には羨望の気持ちが込められているということを思い出してみてください。

ある人の能力に感心して、言葉で褒めたい時に、だらだらと言葉をならべてしまっては、おべっかを使っていると相手に誤解されかねません。そんな時に、「さすがは〇〇さんの独壇場ですね」「すっかり△△さんの独擅場でしたね」などと一言添えるだけで、あなたの意図していることは伝わるはずです。

切り返しにも困らない

また、反対にあなた自身が能力を褒められることもあるでしょう。「君の独壇場で、かなわないよ」「そちらの独擅場になりましたね」などと言われたとしても、「独壇場」も「独擅場」も、もちろん「ドクダンジョウ」と「ドクセンジョウ」の音も、意味していることは同じだと知っていれば、どう返してよいか迷うこともありません。

「独壇場」と「独擅場」の違いについて見てきましたが、ぜひとも、これらの知識を参考にした上で、「独壇場」と「独擅場」という言葉たちを、仕事上の人間関係において役立ててください。

関連記事

Related