「侘しい」の読み方
「侘しい」という感情は誰しもが味わったことがあるでしょう。しかし「侘しい」という言葉は口に出すことも少なく、ましてや書く機会などほとんどありません。「侘しい」は小説や漫画などでは目にすることもありますが、目にしたことのある人の中には「侘しい」の読み方がわからないという人も少なくないのではないでしょうか。
「侘しい」は「わびしい」と読みます。よく「さびしい」「さみしい」と間違えられることが多い言葉です。「侘」という漢字は「侘びる」という言葉にも使われますが、「侘しい」と「侘びる」では意味は異なります。作品によってはひらがな表記で「わびしい」としているものもあります。
「侘しい」には「詫びしい」「寂びしい」という表記の仕方もあります。どれも「わびしい」と読むのは変わらず、意味も大きくは変わりません。
侘
「侘」という漢字には3つの意味があります。ひとつは「侘しい」という言葉に使われるように思い煩い悲観にくれる様子を表します。ふたつめは、静かな生活を楽しむといった意味で使われます。そしてみっつめは、茶道や華道などで使われる美的意識のひとつとして使われます。「侘び寂び」のように使われる言葉です。
「侘」とよく似た漢字で「詫」があります。「詫」は「詫び」のように使われ、謝罪することや謝ることを表す言葉です。非常に似ている漢字なので間違わないようにする必要があります。
「侘しい」の意味と使い方
「侘しい」という言葉の意味どのようなものなのでしょうか。感情にまつわる言葉であることはわかる人も多いでしょうが、詳しく説明はできないという人も少なくないのではないでしょうか。また「侘しい」は口語として一般的に使われることも少ないので、間違った使い方をしている人がいる可能性もあります。
「侘しい」の意味
「侘しい」にはふたつの意味があります。ひとつめは、希望ががなわず力が抜けてしまうような様子を表します。そしてふたつめは、やりきれず心細い様子を表します。とりらもマイナスのイメージの言葉で、夢が潰える、失意の状態にあるなど、心身ともに落ち込んでいる時に使われていることの多い言葉です。
「侘しさ」を感じる人
「侘しい」という言葉は老若男女に当てはまる感情ですが、どちらかといえば年を重ねるほど感じることが多くなる感情と言えます。挑戦したり目標を持ったりすることが多い人ほど、「侘しい」という感情を抱くことも多くなると言っていいでしょう。
「侘しさ」の大きさ
目標に捧げた時間や労力が多いほど、また挑戦に費やした気持ちが多いほど、それが潰えた時の「侘しい」という感情も大きくなります。「侘しい」という気持ちは一瞬で消えることもあれば、長い間消えずに残り続けることもあります。
「侘しい」の使い方
「侘しい」という感情は、失意とともに沸き起こることが多いです。つまり何か目標を持ったりチャレンジしたりする人であれば少なからず経験する感情と言えます。また「侘しい」という言葉はその意味から、自分自身で口に出していうよりも、周りにいる人から認識される方が多い言葉です。
「侘しい」は口に出すことができないほどの虚しさを表すことが多いので、口に出してしまうとその言葉が持つ意味が軽くなってしまいます。しかし口に出さずとも侘しさは相手や周りに伝わることが多いです。
他人に向けて「侘しい」
頻繁ではありませんが、自分ではなく他人に向けて「侘しい」という言葉を使うこともあります。落ち込んだり失念している人に向けて使うこともありますが、これは敢えて「侘しい」ということで相手を元気付けようという気持ちが込められています。仲が良い間柄であるからこそ使うことができる言葉と言えるでしょう。
「侘しい」の類語
失意を表す「侘しい」という言葉には多くの類語が存在します。落胆を表す言葉であれば「やるせない」「寒々しい」「憂鬱」などが類語として挙げられます。「陰気臭い」「陰々たる」のように「陰」という感じが使われることが多いのが特徴です。
孤独
孤独を表す「淋しい」「寂しい」「煢然たる」などの言葉も「侘しい」の類語として挙げることができます。目標を失ったり、仲間を失ったりすることにより感じる「侘しい」という言葉には、「孤独に押しつぶされる悲しみ」の意味が込められています。
不憫
「侘しい」という言葉は、やりきれず心細いという意味から転じて、「不幸である」「劣っている」といった意味合いを含むこともあります。その場合「痛ましい」「しがない」「なげかわしい」「あわれ」「不憫」などの言葉も「侘しい」の類語として挙げることができます。
「侘しい」と「寂しい」の違い
「侘しい」と「寂しい」は類語であり、どちらも孤独を感じる悲しみを表現する言葉ですが、微妙なニュアンスの違いにはどのようなものがあるのでしょうか。「寂しい」は「さみしい」とも「さびしい」とも読むことができます。「侘しい」と「寂しい」という言葉を組み合わせた、「侘び寂び」という言葉もあります。
「寂しい」という言葉は、心が満たされず物足りない様子を表す言葉です。また賑やかでなくひっそりとしている様子も表します。「侘しい」と「寂しい」は現状悲しみに暮れているのは同じですが、未来に向けての感情の動き方に微妙なニュアンスの違いがあります。
違い
「侘しい」という言葉には心細くどうすることもできない悲しみが含まれていますが、「寂しい」には悲しみから解放されたいという希望が含まれています。現実から動くことができない分「侘しい」という言葉の方が深い悲しみが込められていると考えていいでしょう。
「侘しい」と「淋しい」の違い
「侘しい」と「淋しい」の意味の違いはどのようなものなのでしょうか。これには「寂しい」と「淋しい」の意味の違いを考える必要があります。「寂しい」と「淋しい」は全く同じ意味でどちらを使っても間違いではありません。しかし常用漢字として使われるのは「寂しい」の方で、新聞やニュースなど公共のものには「寂しい」が使われています。
「寂しい」と「淋しい」の意味は同じなので、「侘しい」と「淋しい」の違いも「寂しい」と同様だと言えます。ただ、「淋しい」という漢字は部首にさんずいが付いており、同じ悲しみでも、涙を流す深い悲しみをイメージすることができます。
違い
「侘しい」は漢字に分けると「人」と「宅」になり、家に一人でいることの物悲しさが表現されています。「淋しい」は「さんずい」と「林」に分かれ、静かな林の中で涙を流す悲しみを感じることができます。
「侘しい」の例文
侘しさを感じるシチュエーションは人それぞれです。学業に関するもの、仕事に関するもの、スポーツに関するもの、恋愛に関するもの、人間関係に関するものなど、目標を掲げるものであればどんなものにも「侘しい」という気持ちを抱く可能性があります。
「希望がない」例文
「受験に失敗し、侘しい気持ちのまま日々を過ごしている」
「単身赴任で新しい環境で過ごすことになり、侘しさに押し潰されそうだ」
「ずっと欲しかった絵画が他人に飼われてしまい、侘しさから酒ばかり飲んでいる」
「侘しい」という言葉は、希望がなくなり、すぐには動き出せそうもないほど落ち込んでいる様子を表すことができます。そのため「失恋した侘しさをバネにして、学業に励む」というような使い方は間違いであると言えます。この場合は「悔しさ」「悲しみ」などの言葉を使うのが適切でしょう。
「心細い」例文
「愛犬に死なれ、侘しい気持ちでいっぱいだ」
「知り合いがおらず、一人侘しく夕食をとることにした」
「会社をリストラされ、侘しさから何もする気が起きない」
「夜になると詫びしさが押し寄せて眠れなくなる」
以上のように、「侘しさ」という言葉に含まれる心細さは、単に周りにいる人の数に左右されるわけではありません。多くの人に囲まれていても意見が違ったり壁を感じたりすれば「侘しさ」を感じることもあります。またたとえ一人であっても心を寄せることのできる何かがあれば、「侘しさ」を感じずに生活することもできます。
「劣っている」例文
「お金がなく侘しい昼食しか食べることができない」
「侘しい商店街にあるお店はほとんどが閉店していた」
「故郷は侘しい雰囲気で交通手段も発達していない」
「侘しい服装をした男性が一人で座っていた」
「侘しさ」は単にお金の無さから感じることもあれば、お金は満ちていても心の悲しさから感じることもあります。他人から関心を持たれていなかったり愛情を注がれていなかったりすると、人並み以上のお金を持っていても「侘しさ」を感じてしまうこともあります。
「侘しい」の古語
「侘しい」という言葉は古語としても用いられていて、枕草子や徒然草にも登場します。意味は現代のものと同様に、つらくやりきれないという意味と、がっかりして興ざめであるという意味もあります。また困っているという意味合いもあり、現代で使われるより多くの意味で使われていたことがわかります。
「まことに侘しくて、何しにまうでつらむと」という文は「とても辛くて、何のためにお参りしたのだろうと考えてしまう」という意味です。「まことに」や「いと」などの言葉と一緒に使われることが多い言葉です。
「侘しい」気持ちからの脱却
何かにチャレンジしたり目標を持つ以上、「侘しい」という感情を避けることはできません。「侘しい」気持ちになってしまった時、どうすればその状況から脱却することができるのでしょうか。場合によってはすぐに侘しさから脱却できることもあれば、いつまでたっても侘しさを引きずってしまうこともあります。
「侘しい」気持ちになってしまった時、その状況から無理に抜け出すのはやめたほうがいいでしょう。「侘しい」気持ちは心を整理するのに必要な時間であると言うことができます。無理に抜け出そうと色々なことを試すと、無意味どころかさらに「侘しさ」を募らせてしまう結果になる可能性もあります。
現代はものがあふれています。また目に見えるものだけでなく目に見えない関係性なども周りに多く存在します。その中で「侘しさ」を感じるのも仕方ないでしょう。「侘しさ」を感じたら、自分に本当に必要なものが何なのかを考える必要があります。