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自己効力感の尺度と看護への影響・自己効力感を高める方法

カテゴリ:自己啓発

更新日:2024年10月17日

自己効力感とは

今や、自己啓発系の書籍ですっかり認知度が上がった「自己効力感(セルフ エフィカシー:self-efficacy)」ですが、もともとはスタンフォード大学教授で心理学者のアルバート・バンデューラ(Albert Bandura)が1990年代に「社会的認知理論」の中で提唱した認知の種類で、人が行動を起こす前に感じる「遂行可能感」を示す心理学の用語です。

自己効力感とは、自分がある課題を達成できる可能性に対する自分自身の判断です。外部からの要望に応えられるという自信(セルフ イメージ)と言い換えることも可能で、たとえば他者の成功談を聞いたとき「自分にもできそうだ」と思える性質を意味します。「自己可能感」と訳されることもあり、「思い込み力」とも言われます。

バンデューラ博士によれば、わたしたち人間は自分の感情や行い、ものの考え方などをコントロールしているのが自己効力感であり、言い換えれば人間の考え方や感情の源泉とも言えるのが自己効力感であると表現することもできます。その理論は幅広い分野に応用され、心理学のみならず、社会学や教育学などに大きな影響を及ぼしてきました。

自己効力感の定義

人が自分の行動を決める要因には、「先行要因」「結果要因」「認知的要因」の3つがあると考えられていますが、バンデューラ博士によれば、このうち自己効力感と関係が深いのが「先行要因」で、先行要因はさらに「結果予期」と「効力予期」の2つに分類されます。

「結果予期」とは、ある行動がどのような結果をもたらすかを予期(評価・想定)することです。一方、「効力予期」は、自分が望む結果を生み出すための行動を、自分がどの程度うまくできそうかという予です。自己効力感とは、後者である「効力予期」の自己評価を示す表現です。

自己効力感には3つのタイプ

「自分はできる」という思い込みが自己効力感ですが、作用する状況に応じて大きく3つのタイプに分類され、語られることがあります。以下で簡単にご紹介します。

自己統制的自己効力感

自分の行動全般をコントロールするための、基本的な自己効力感を「自己統制的自己効力感」といいます。自己統制(セルフレギュレーション:self-regulation)は、強制されるのではなく、自らの意志によって自分自身の行動を調整しようとすることで、対人関係の基礎となる行動です。

この自己効力感が低いと、たとえばダイエットや禁煙など、自分自身の健康管理のために自己統制したいと望んでいるにも関わらず、「目標を達成できないに違いない」との思いから禁煙やダイエットに成功した自分を想像できない、一歩踏み出せない、3日坊主になったら「やっぱり無理だった」とすぐに諦めてしまうという結果に繋がります。

これでは身体的健康を維持できないばかりか、自己管理ができない自分自身への嫌悪感は強まるばかりで、メンタルへの影響も心配されます。

社会的自己効力感

おもに対人関係における自己効力感を「社会的自己効力感(ソーシャルエフィカシー:Social Self-efficacy)」と呼びます。人は自己効力感の低い課題に対して消極的になったり、意識して避けるようになる傾向が強く、それがさらに良くない結果に繋がるといわれています。良好な対人関係を築く自身がない人が孤立しやすいのはそのためです。

たとえば、数人のグループが集まって小声で何か相談している時、自己効力感の高い人なら自然に加わることができますが、そうでない場合は「のけ者にされているのでは」「自分の陰口を言っているのでは」と想像して壁を作ってしまいます。

学業的自己効力感

同じように、「学業的自己効力感」は、学習能力に対する自己イメージです。小学校時代の先生が苦手で勉強が嫌いになったという人や、親から口煩く言われた記憶から学業的自己効力感が低下したという人も多いのではないでしょうか。自己効力感は、生まれ育った家庭環境や養育姿勢に大きく関係していると言われています。

自己肯定感との違い

よく自己効力感と比較される言葉に「自己肯定感(Self-esteem)」があります。どちらもモチベーション(物事に取り組む意欲)に深い関係がありますが、自己効力感が自分自身の能力に対する自己評価であるのに対し、自己肯定感とは言い換えれば「無条件に自分を信じる」感性であり、「自分は生きているだけで価値がる存在」だと感じられる心の状態を意味します。

自己肯定感が低いと、自分自身の感覚よりも他者から見てどう思われるかに神経をすり減らして萎縮したり、他者の言動に過敏に反応してしまうため生きていて疲れます。どうせできないと考えて何事にも本気で取り組まない、自分に自信がないので取りあえず良い人を演じる、他者を批判して優位性を示そうとするなどは、自己肯定感の低さを示す特質です。

自己肯定感の強い人は、失敗すれば落ち込むこともありますが、そんな自分を受け入れることができるので立ち直りも早いのが特徴です。「自尊感情」とも呼ばれることもあり、時にプライドの高さを意味する性質として誤解されることもありますが、自分自身の尊さを知る人は他者をも尊重することができるため、自分だけが尊いということではありません。

自己有用感との違い

自己効力感や自己肯定感に近く、やや聞きなれない言葉に「自己有用感(じこゆうようかん)」があります。人から感謝された、人の役に立つことができた、人に喜んでもらえたなど、他者との関わりを肯定する中で自己を肯定する感情です。

すでに述べたように、「自尊心」とは自他を超えた人間本来の尊さに目覚めた時に感じる感情であり、自分勝手なナルシストのことではありませんが、子供の自尊心を育てようとする取り組みの中で「ほめ育て」の弊害が見え始め、その難しさが見直されるようになりました。

そこで、「褒めたり、おだてることで自信をつける」という育て方ではなく、「褒められることで自己有用感が高まり、自信を持って成長できる」育て方が評価されるようになりました。人に認められない人間や、役に立たない人間には価値がないとのゴールに向かいそうな気もしますが、こばかりは結果が出るまで何とも言えません。

自己効力感が高い人の思考

新しいことにチャレンジする時、「なんか行けそうな気がする」「今はできないけど、練習すればできるようになると思う」という根拠のない自身を持つ人は、自己効力感が高いと言えるでしょう。「そんな気がする」「なんだかわくわくする」と思える時、そこに理由なんてありません。

プロデューサーの秋元康氏が、アイドルに必要な素養を問われて「根拠のない自身」と答えたというエピソードは有名ですが、自信過剰な人が雰囲気でそれとわかるように、自身のなさもその人の雰囲気を作り、魅力を半減させると言われます。「自分自身こそが最強の応援団長」だと言われる所以もそこにあると言ってよいでしょう。

自己効力感が低い人の思考

あなたは、友人との対話の中で「そんな風に思えない」「そんなの、きれいごとにしか聞こえない」「どうすればそんな考え方ができるのか」と、ネガティブなことを言われた経験はないでしょうか。その友人は自己効力感が低かった可能性があります。

何か目標を持った時、わたしたちはその道の成功者のやり方を参考にしようと考えます。伝記を読んだり、自己啓発本を読むのもそのひとつです。しかし、自己効力感の低い人がいくら成功者のエピソードに触れたところで、「あの人だからできたこと」「親が資産家だったから」「才能に恵まれた」と、他の人にはできても自分にはできないさまざまなアイデアを並べるだけです。

自己効力感の低い人にとって、他者の成功談や友人からの励ましは一時の妄想を楽しむための物語に過ぎないので、なかなか「自分も同じように行動を起こしてみよう」とは思えません。

自己効力感を高める方法

まだ因果関係や関連性に関する研究は少ないものの、自己効力感を形成する要因には幼少時の保育の質や親子関係が影響しているとの報告もあると聞きます。また、個人の自由意志よりも世間体や常識を重んじる日本人は、世界的に見ても自己効力感が低い民族だとも言われます。

しかし、今からでも自己効力感を高めることは十分に可能です。では、自己効力感が低く「どうせできない」と考えがちな性格に何らかのポジティブな変化を与えるためには、どうしたらよいでしょうか。ここからは、「自己効力感に変化をおよぼす情報源」つまり、自己効力感を向上させるのに効果的な方法をご紹介します。

達成経験

「達成経験(遂行行動の達成)」とは、実際に行動した結果として何かをやり遂げることができたとか、成功したという経験のことです。研究によって実証されているわけではありませんが、一般に自己効力感の先行要因のうちでもっとも影響力があるとされ、重要視されています。

自分で行動を起こし、成功するという体験を蓄積することで自己効力感を高めると、一度できたことは「次もできるだろう」と考えやすくなり、さらに自己効力感が上昇します。「好きこそものの上手なれ」とは、自己効力感のことを表現したことわざだったと言って良いでしょう。

具体的な方法としては、一度に高い目標を決めてしまうのではなく、段階を追って無理なく達成できるように「できて当たり前」と思えるような小さな目標から徐々に積み重ね、とにかく「成功体験」を蓄積する「スモールステップの原則」を守ることが大切です。

反対に、高過ぎる目標を掲げて挫折したり、失敗する体験が増えると「何をやってもうまくいかない」と自暴自棄になり、自己効力感が低下します。

代理経験

初回公開日:2017年11月09日

記載されている内容は2017年11月09日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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